まさに都構想の詐欺的手法を自ら証明した橋下氏だったが、この後に続いて出てきたセリフも驚くべきものだった。
「それから毎年予算は、スタートは、200億、300億の赤字から始まって、1年経ったら数百億くらい余るんですよ。これ当たり前で、数兆円の予算組んでいったら、不用額っていうのが200億、300億、出てくるんですよ。お金が足りないのか、いや余ってるのか、これは水掛け論になってしまう。だから最後、僕はずっと言ってたんですけど、現状の枠でやっていくのか、可能性にチャレンジするのか、結局はこの2つ。可能性にチャレンジってなると、見えない、不安だって心理状況になるんだけど、僕はチャレンジで行こう!っていうことを言い続けてきたんだけど、やっぱりそれがうまく浸透しなかったですね」
大阪府知事・大阪市長時代、あれだけ「大阪は大赤字、企業ならとっくに破産している」とわめき、「コスト」「生産性」「無駄をなくす」として医療や福祉、住民サービスを徹底して削減してきた橋下氏。しかし、実際は「お金が余っているのか足りているのかはわからなかった」らしい。
そして、結果や効果がわからなかったのに、都構想をぶちあげた理由が「チャレンジで行こう!」だったというのである。橋下氏はさらにこう続けた。
「大阪都構想に限らず、日本全体のメンタリティにも挑戦したつもりだったんですよ。これからの時代、不安であったとしても、不確実であったとしても、第一歩踏み出さなきゃ乗り越えられないじゃないか。可能性にチャレンジする日本人にならないと、世界のなかでやっていけないんじゃないかっていう思いが、2008年からずっとあって。ひとつ大阪都構想運動をしてきましたけど」
「僕は大阪都構想から、さらにグレーター大阪、関西州になって、道州制に話を持って行きたかったんですけど。これは、明日あさって、飯を食べる話じゃないんです。日本の国の形をどうするかっていうロマンの話なんで、そりゃ明日あさっての飯の話を持ち出されると、ロマンの話はなかなか通じないですね」
そもそも道州制と大阪市廃止は逆方向の話だと思うが(道州制は市を残して都道府県を廃止する制度)、信じられないのは、橋下氏が都構想を正当化するために、「チャレンジ」だの「ロマン」だのといった安っぽい自己啓発本みたいな精神論をもちだしてきたことだ。
しかし、これ、ある意味、橋下氏の本音なのではないか。冒頭、松井市長が否決を受けて「政治家冥利に尽きる」と発言し、批判を受けていることを紹介したが、実はこれ、前回の住民投票で都構想が否決された際に大阪市長だった橋下氏が語ったセリフと同じものだ。