拡大が止まらない新型コロナ感染、ここにきて感染者数だけでなく重症者や死亡者が一気に増えてきた。15日時点で重症者は新たに18人増えて229人。死亡者も13〜15日の3日間で27人にのぼっている。
特に深刻なのが大阪で、15日時点での重症者は東京の3倍以上にのぼる70人。府内の重症者数はこれまで国の緊急事態宣言が発令されていた4月19~21日の65人が最多だったが、過去最多を記録したことになる。
しかし、考えてみればこの現状は当然だろう。7月から8月はじめにかけてものすごい勢いで感染が再拡大し、完全に市中感染が蔓延の様相を呈していたのだから、そのあと、高齢者や持病を持っている人たちに感染が広がり、重症者や死者が続出するのは目に見えていた。
ところが、安倍首相や西村康稔コロナ担当相、菅義偉官房長官らは「若い人や夜の街が大半で、重症者は少ない」と移動自粛や休業要請を拒否し、GoToキャンペーンを強行。大阪府の吉村洋文知事も同じく「若い人が多く、重症者は少ない」と本格的な移動自粛や休業要請を行わなかった。
その結果がこれである。いったい彼らは重症者、死者の急増というこの現実を前にどう申し開きをするのか。と思っていたら、重症者が全国で最も急増している大阪府の吉村知事が、例の「ポビドンヨードがコロナに効く」に続いてでとんでもないフェイクを駆使して抗弁した。
14 日の取材でのこと。記者から「重症者の増加をどうとらえているのか」と聞かれた吉村知事は、こう答えたのである。
「治療的な観点でいくと、報告受けているのが、大阪の場合は、死者をできるだけ減らしたいということで、できるだけ早めに気管切開をして、人工呼吸器をつけて、命を救う治療を優先している」
ようするに、大阪の重症者が多いのは、重症者の要件である人工呼吸器を早めにつけているからだ、と釈明したのだ。
ちょっと何を言っているのか意味がわからない。「気管切開」は「気管挿管」の言い間違いだろうからつっこむつもりはないが、厳格にガイドラインが決まっている医療行為で、特定の地域だけ人工呼吸器を早くつけるなんてことは聞いたことがない。それに、人工呼吸器は、酸素吸入が困難になった人を助けるためのものだから、早めにやったからといって、コロナを治療できるわけでも、死亡者を減らせるわけでもないと思うのだが……。
実際、この発言には、ポビドンヨード問題と同じく、医療関係者からも批判の声が上がっている。
たとえば、大阪大学医学部病理学教授・仲野徹氏もこの発言を取り上げたツイートをRTするかたちで、こう指摘している。
〈大阪だけ治療が違う???ありえない妄言を吐くようになったらおしまいでしょう。こんなことでごまかせると思っているのか、吉村知事は。粛々と重症化率の高さを受け入れないと、とんでもないことになる〉
さらに、ふだん吉村知事万歳の在阪テレビ局のなかにも、この「大阪は早めに人工呼吸器」発言に疑問を呈する番組があった。