このように、保健衛生を目的に調理場の検査をおこなうことができないとわざわざ言及していることからもわかるとおり、風営法では感染症対策を目的に立ち入り検査をおこなうことは認められていないのだ。
しかも、この「解釈運用基準」では、はっきりと以下のように明記されている。
〈立入り等の行使に当たっては、いやしくも職権を濫用し、又は正当に営業している者に対して無用な負担をかけるようなことがあってはならない。〉
〈職権を濫用し、又は正当に営業している者に対して無用な負担をかけるようなことがあってはならない。〉
つまり、菅官房長官の「風営法で立ち入りできる」という発言は法的根拠がまったくないばかりか、「職権の濫用」だとして固く禁じられている行為なのだ。
権力を濫用し、警察官に立ち入り検査させることで「夜の街」に攻撃が向かうよう扇動しようとは卑劣としか言いようがないが、安倍政権は、こうして「夜の街」をスケープゴートにすることで、自分たちの無策によって引き起こされている“最悪の事実” を覆い隠そうとしているのだ。
その“最悪の事実”というのは、言うまでもなく逼迫する医療体制だ。
安倍首相は21日の自民党役員会で「医療提供体制は逼迫しておらず緊急事態宣言を発する状況ではない」と断言したが、これに対し、東京都モニタリング会議の専門家メンバーである山口芳裕・杏林大学教授は「国のリーダーが『都の医療は逼迫していない』というのは誤り」だと批判。実際、23日放送『news23』(TBS)では、連休初日の昨日の段階で東京では、医療機関で「休日で看護師が少ない」「担当医がいない」「すでに2件受け入れたから他を当たってほしい」などという理由による患者の受け入れ拒否が起こっているとし、都の関係者も「この連休中に陽性患者の入院先がどこも見つからない状況になるのではないか」とコメントしている。
この現実ひとつとっても、3・4月に数々起こった悲劇に対して政府と東京都には何の反省も教訓もないことがはっきりとわかるが、いまのような感染再拡大を招いている原因も同じで、何の対策も打ってこなかった結果なのだ。