毎日新聞(7月11日付)のインタビューに答えて、村上春樹は『猫を棄てる』を書いた理由について、あらためてこう語っている。
〈今、書いておかないとまずいなと考えました。正直言って、身内のことで、あまり書きたくなかったんですけど、書きのこしておかないといけないものなので、一生懸命書いたんです。物を書く人間の一つの責務として〉
さらに記者から「それはお父さんが3度召集された戦争、特に日本による中国侵略に関わることだからでしょうか」と問われ、こう答えていた。
〈それはすごく大きいですね。そういうことがなかったことにしたいという人たちがいっぱいいるから、あったということはきちんと書いておかないといけない。歴史の作りかえみたいなことが行われているから、それはまずいですよね。父親が生きているうちは、あまり書くのは適当ではないと思っていたから、(2008年に)亡くなってからしばらく時間を置いて書いたということです〉
なかったことにしたいという人たちがいっぱいいるから、歴史の作り変えみたいなことが行われているから、物を書く人間の責務として書いておかないとまずいと考えた――。
村上春樹がなにを訴えようとしているのかはもう誰の目にも明らかだ。まともなメディアなら、村上のメッセージを正面から受け取り、歴史修正主義にきちんとNOを突きつけるべきだ。
(酒井まど)
最終更新:2020.07.12 09:54