そう、辛坊氏も完全にホストたちが10万円もらうために、コロナを感染しあっていると決めつけているのだ。
ごく一部の不正を針小棒大に言いたてて、福祉制度そのものを否定するというのは、ネトウヨや新自由主義者による弱者叩きの典型で、生活保護バッシングでもよく見られるが、今回の「ホストたちが10円もらうためにコロナを感染しあっている」というのは、冒頭でも指摘したようにもっと悪質でほとんどデマといっていい。
なぜなら、新宿区の見舞金10万円を受け取るためには、入院・隔離に協力することが前提になっているため、感染しあうことは物理的に不可能だからだ。また、新宿区の説明によれば、見舞金10万円制度には、新宿区に住民票があることなど、ほかにもさまざまな審査基準を検討しており、現在新宿区では約900人の感染者が出ているが、対象はそのうち2百数十名にすぎないという。これでなぜ、東京都の感染者増加が「10万円狙いのホストのせい」ということになるのか。
しかも、辛坊氏のグロテスクな発言はこれだけではない。軽症者が隔離用ホテルに入所することまで「ホテルに全部公費で丸抱えで2週間」と税金泥棒扱いし、ホストクラブの集団検査についても「発熱していなくてもホストクラブの人は集団で受けられる」などと攻撃する始末だった。
ホテルで隔離されるのも症状もないのに検査を受けるのも、その人個人でなく社会全体に感染拡大させないために必要なのだ。それをまるで「ズル」のように語るとは、この人には公共という観念がないのだろうか
いや、ないのだ。辛坊氏といえば、イラク人質事件で自己責任論をがなりたてて人質バッシングを展開していたにもかかわらず、その後、自身がヨットで太平洋横断中に遭難し自衛隊に救助され、税金で賄われた多額の救助費用について「大ブーメラン」と批判を浴びると、「命がけの彼らを見ていて、それで金払いますとは言えない」「金額にする発想自体違う」などと言ったこともある御仁。ようするに、税金を自分以外の他人に使われるのがとにかく嫌なだけなのである。