この問題のすり替えは、加計学園問題でも同じだった。橋下氏は「僕ら法律家は手続き、プロセスをよく見る」などと言いながら、「加計学園は、すごい親友の加計孝太郎さんの学園であり、そこに特区として獣医学部を設置させる。僕はこれ、賛成なんですけども」と発言。そして、安倍首相が国家戦略特区諮問会議の議長であることから、「『加計さんが申請するんだったら、じゃあ俺、議長をこの案件については引くわ』とか」言えばよかったのではないか、と述べたのである。
「加計学園の獣医学部設置は賛成」「議長を引けばよかった」って、まったく橋下氏は何を言っているのだろう。加計学園の問題点は、最初から“加計ありき”で柳瀬唯夫首相秘書官が事前に面談をおこなったり、和泉洋人首相補佐官が文科省の前川喜平事務次官を恫喝するなどの政治的な動きによってプロセスを歪め、加計学園を特区に選んだことだ。にもかかわらず、“議長を引けばよかっただけ”って、橋下氏はまったくプロセスなど見ていないではないか。
「桜を見る会」についても、橋下氏は安倍首相をアシストし続けた。公職選挙法違反、政治資金規正法違反などが疑われているにもかかわらず、違法性はないという前提で、こう語ったのだ。
「桜を見る会のときも、すごい疑問だったのが、やっぱり総理も後で発言されていましたけど、行政のイベントなのに政治的なイベントとごっちゃにされたようなところもあって、そのときに官僚のほうから、『ちょっと総理、このやり方は、政治と行政が混乱しますよ、これちょっと注意したほうがいいですよ』というような注意がなかったのかなというのが、すごい不思議なんですよ」
ようするに、悪いのは安倍首相ではなく、注意しなかった官僚のほうだというめちゃくちゃなすり替えをおこなったのだ。
さらに呆れたのは、逮捕された河井克行・前法相と河井案里参院議員に自民党本部が1億5000万円を提供していた問題についてだ。橋下氏は、「勝たせたいとしても、国民としては1億5000万円と言う額に『ん?』と思い、引いてしまった」「選挙でお金がかかるはかかるんですけども、今後、内規をつくっていくとか、なにかないと、お金の使い方のところでやっぱり(国民と)ズレが出てくると思うんですね」と、一応、苦言らしき発言はしたものの、その前にこう強調していた。
「自民党のほうから1億5000万円お金が出ていたと。でも、違法・不正はおそらくないと思うんですよ。まさかだけど、自民党本部から『買収資金に使え』と言ったらアウトだけど、それはまずない」
「(自民党に)違法・不正はなかった。河井さんの問題」
河井夫妻の買収事件の核心は、安倍首相の意向を受けて1億5000万円が投入され、それが買収の原資になっていた可能性が高いことだ。しかも、この選挙に安倍首相が地元の安倍事務所の秘書を指南役として投入していたこともわかっており、検察当局は自民党や安倍事務所の関与についても捜査していることがわかっている。それなのに、橋下氏はまたも前もって「違法・不正はない」と言い、問題を“お金の使い方”にずらしてみせたのだ。しかも、このアシストを受けて、安倍首相が「政党助成金の使い道においては自民党は相当厳しくやっている」「(1億5000万円も)党の機関紙を相当多くの方々に複数回にわたって配布したことが明らかになっている」と主張すると、何も突っ込もうとしなかった。“機関紙に配布1億5000万円”という自民党側の主張については、様々な専門家やジャーナリスト、当の自民党議員からも「そんなにかかわるわけがない」と批判の声があがっているにもかかわらず、だ。