AbemaTV『NewsBAR橋下』6月20日放送より
新型コロナを「100年に一度の国難」と呼ぶくせに、通年国会を求める野党の案を拒否し、通常国会を閉会させてしまった安倍首相。ところが、国会を閉会してさっそく何をするかと思えば、お仲間のやっている番組への露出だった。20日、橋下徹氏の冠番組である『NewsBAR橋下』(AbemaTV)に出演したのである。
もっとも、今回の『NewsBAR橋下』への出演については「少し、様相が違うことになるのではないか」という予測もあった。安倍首相と橋下徹氏といえば、橋下氏が大阪市長時代から連携し、松井一郎・大阪府知事(当時)、菅義偉官房長官と定期的に食事会をしてきた間柄だったが、橋下氏はこのところ、以前より政権批判色を強め、ネットニュースでは毎日のように「橋下氏が○○○という番組で安倍政権を鋭く批判」と話題になっていたからだ(実際はそんなたいした批判でもなかったが)。また、国民民主党などが野党共闘の総理候補としてアプローチしているとの噂もあった。そのため、一部では今回ははじめての“ガチ対決”になるのではないかという見方も流れたのだ。
そして、この安倍首相が出演した回が放送されると、いくつかのメディアは橋下氏が森友・加計問題から河井夫妻逮捕までを追及したことを大々的に報じた。中日スポーツにいたっては「橋下徹氏が緊急生対談した安倍首相に猛烈ツッコミ!」などと報じた。
しかし、実際に繰り広げられたやりとりはまったく違うものだった。橋下氏は安倍首相に「猛烈ツッコミ」どころか、猛烈なアシストとヨイショを繰り広げていたのだ。
たとえば、番組の最初のトークテーマは「橋下が『安倍政権のここは残念』と思うところ」というものだったのだが、橋下氏はさっそく「やっぱり政策で賛否両論あること、これはいくら反対の声があろうとも、やらなきゃいけないことはやらなきゃいけない」などと語ったかと思えば、安倍首相の祖父である岸信介が進めた日米安保を持ち出して「国民の支持が一時下がったとしても、長期的に見れば日本のためになったな、と(なることがある)」などと言い出す始末。そして、「疑念を抱かれるようなかたちで、信頼・支持が下がるというところは非常に残念だなというふうな思いがありまして、そのきっかけは森友学園からスタートしたのかなと」と話題を森友問題に移したのだが、その「猛烈ツッコミ」というのは、こんなものだった。
「これ、国会のなかで、違法・不正があったのか、それがすごい議論の的になりましたから、野党は『違法性があった! 森友学園となんか関係があったんじゃないか』(と追及した)。当然、総理は『ない』という話になるんですが、総理はそのときに、違法性がなければ全部問題がないような、そういうような主張をされたところから、いま混乱が生まれてしまったのかな(と思う)。森友学園、大阪の問題でもありましたから、あのときに、総理の奥さんが名誉校長になっていたところは、やっぱり僕はあれはすごい影響があったと思うんですよ。違法性がなくても。だから僕はあのときに、違法性はない、違法性はないんだけれども、でもここは、名誉校長になっていたところは問題だった、だからこういうルールにして、『自分の妻に対してはこういう役職に就かせないようにする』というようなことがあればやっぱり、ちょっと違ったのかなと思うんですが」
橋下は平然と「違法性がない」などと言い切っているが、約8億円も値引きして国有地が売却された点について会計検査院も「根拠は不十分」としている上、当初、売却額を開示しなかったのは違法だとして国を相手取って起こされた訴訟で大阪地裁は違法性を認め、国に賠償を命じている。だいたい、森友問題でさらなる混乱を生んだのは、安倍首相の「国会議員も総理もやめる」発言であって、それにより公文書改ざんという国家的犯罪が起こり、赤木俊夫さんは自殺にまで追い込まれてしまったのである。そういうことを橋下氏は全部すっ飛ばして、「奥さんを役職に就かせないようにすると言えば良かっただけなのに」などと的外れなことを言い出したのである。これのどこが「猛烈ツッコミ」なのか。
実際、橋下氏の発言に対して安倍首相は「たしかにですね、橋下さんがおっしゃられたように、いろんな事業についてですね、疑いをかけられるようなことがあってはならないんだろうと思います。ですから、その意味であのあと妻もすぐに名誉校長かな、それをすぐに辞めましたし、いろんな役職頼まれていたんですが、そのほとんどを退くことにしたんですが」などと発言。問題の焦点は昭恵氏の役職問題になってしまったのだ。