ようするに、この知事バトル、実質的な中身はどう見ても大村知事のほうに理があったのである。
吉村知事は28日、ゴマカシだらけの反論をさんざん書き連ねたあげく、小池百合子都知事が大村発言を受け流したというニュースをRTして〈この対応を見習うことにします。〉とツイート。会見でも上から目線で「相手にせんとこと」などと捨て台詞をはいて一方的に論争を終わらせてしまったが、この態度だって、両者のやり取りの詳細を知っていたら、“オマエは池乃めだかか”という話だろう。
ところが、冒頭で指摘したように、メディアやネットはこぞって大村知事を批判し、吉村知事を「圧勝」「さすが」と持ちあげた。いったいなぜか。
最大の理由はもちろん、吉村知事が自分のイメージをアップするための詐術に長けているからだ。
本サイトでは以前から、大阪のコロナ対策が実は失策と後手対応だらけだったにもかかわらず、やってる感演出と、親分・橋下徹元市長譲りの詭弁やスリカエ、スケープゴート攻撃によって、その失政をごまかしていると指摘してきた。
今回も全く同じで、実際は、事実上の医療崩壊が起きているにもかかわらず、デタラメを強弁し、大村知事への個人攻撃に話をスリカエることで、その事実に蓋をしてしまったのだ。
さらにもう一つ大きいのが、吉村知事・維新支持層にネトウヨが多いことだろう。周知のように、昨年の「あいちトリエンナーレ」問題以降、ネトウヨは大村知事バッシングに血道をあげ、高須克弥院長らは現在も大村知事リコール運動を展開している。そして、吉村知事や松井市長も「あいトリ」問題でネトウヨと一緒になって大村知事を攻撃していた。
こうした構図の延長線上で、ネットで吉村知事を絶賛し、大村知事を排撃する流れが生まれ、「#吉村寝ろ」「#大村寝てろ」というハッシュタグまで拡散されるようになったのだ。
今回、吉村知事や松井市長が医療崩壊問題を大村知事への個人攻撃にすりかえたのも、こうした流れに乗っかって、大村知事を攻撃すれば、維新信者やネトウヨの支持を得られ、医療崩壊問題に蓋をできると考えたからだろう。大阪の感染拡大が問題になったとき、吉村知事と松井市長は対立している井戸敏三知事がトップの兵庫県をスケープゴートにして、同県との往来自粛だけを打ち出したことがあったが、それと全く同じ作戦というわけだ。
そして、この作戦はまんまと成功した。ネットはもちろん、テレビなどのマスコミもネットに引きずられて、論争の詳細などを一切検証することなく、「知事バトルは吉村知事の圧勝」などと煽り立てている。