記事によると、そもそも安倍首相は「一律10万円給付」が腹案で、「現金支給はやっぱりインパクトがあるよね」と周辺に語っていたという。政府の自粛要請による国民の生活不安をどう支援するのかではなく、「インパクトがあるよね」などと支持率アップの思惑しかない発言をしていること自体がどうかと思うが、それはともかく、この一律給付案に待ったをかけた人物がいた。今井尚哉首相補佐官だ。
〈「一律給付しても効果がないのは、定額給付金の時に実証されています」。首相側近の今井尚哉首相補佐官は安倍に進言した。〉
本サイトでも伝えてきたことだが、いま、安倍首相は今井首相補佐官の言うことしか聞かない状態になっている。安倍首相が「今井ちゃんは本当に頭がいい」と誰よりも買っている今井首相補佐官のこの「鶴の一声」がどれほどの影響を及ぼしたのかは想像に難くない。
さらに、この今井首相補佐官の進言に乗っかったのが、麻生太郎財務相と財務省だ。麻生財務相はリーマン・ショック後に実施した定額給付金が批判された経験があるが、それで麻生財務相は安倍首相に〈「二度と同じ失敗はしたくない」と異を唱えた〉というのである。
そもそも、今井首相補佐官にしても麻生財務相にしても、リーマン・ショック後の定額給付金の話を引き合いに出しているが、定額給付金は消費喚起を狙った景気対策でしかなかったものだ。だが、今回の新型コロナ対応では早急な国民への生活支援策が求められている。根本的に話がまるで違うのに、今井首相補佐官も麻生財務相も、いまだに経済的効果しか考えていないのだ。
しかし、それは当初、一律給付を口にしていた安倍首相だって同じだ。国民の生活を第一に考えれば、今井首相補佐官の意見を突っぱねたはずだが、安倍首相は今井首相補佐官と麻生財務相からの反対を受け、〈限定した世帯への給付〉を固めたのである。
しかも、安倍首相が固めた〈限定した世帯への給付〉に対して、公明党から「なんで1人世帯と5人世帯が同じなんだ」というごく当たり前のツッコミが入り、斉藤鉄夫幹事長は財務省の太田充主計局長を議員会館に呼びつけて詰め寄ったというのだが、このとき、太田主計局長はこう押し返したという。
「総理が『世帯』とおっしゃっている」
現在、安倍首相が進めようとしている「1世帯あたり30万円の現金給付」案は、世帯主の減収を基本にした時代錯誤も甚だしいシロモノだ。これに批判が殺到した結果、14日になってようやく世帯主以外が減収になった場合でも支給する方向で検討すると言い出したが、しかし、いまだに世帯単位での支給をあらためようとはしていない。つまり、こんな非常時でも安倍首相は「個人より家族」という「伝統的家族観」を押し付けることに躍起になっているのだ。
これほど全世界で猛威を振るう感染症対応に直面してもなお、「自己責任論」と「極右思想」に固執する自民党と安倍首相。このままでは、ほんとうに国民は安倍政権にすべてを自己責任に押し付けられ、殺されてしまう。国民は本気で、新型コロナと同時に、この政権から身を守る方法を考えなくてはならないだろう。
(編集部)
最終更新:2020.04.16 01:19