しかし、言っておくが、この不倫疑惑は単に“恋愛スキャンダル”で終わるものではない。というのも、前述のとおり、小間澤氏は単なる神社本庁の幹部職員ではないからだ。
小間澤氏が事務局長を務める神道政治連盟といえば、ゴリゴリの右派団体で、国政選挙でも自民党の極右候補を組織的に応援してきた。その国会議員連盟の会長は、安倍晋三首相だ。神政連は〈日本人としての誇りを再認識するために、あなたも日本の伝統文化や家族の絆を守る運動に参加しませんか?〉(HPより)などと“家族の絆”をダシにして賛同を呼びかけているのだから、関係者が眉を顰めるのは当然の話だ。
「小間澤さんは、田中総長と並ぶ神社界の実力者である打田文博(神政連)会長の“子飼い”といわれています。 神社本庁の渉外部長が神政連の事務局長に就くことは半ば慣例ですが、小間澤さんのように、本庁で人事を司る秘書部長をも兼任するのは異例のこと。本来はそうした人事は行われるべきではない」(神道政治連盟関係者)
さらに小間澤氏は、安倍政権による憲法改正など極右政策を後押しするあの日本会議の常任理事かつ政策委員の一員だ。「日本会議政策委員」といえば、政策立案などを手がける、いわば日本会議の実質的中枢。“安倍首相のブレーン”とも言われる伊藤哲夫・日本政策研究センター所長、高橋史朗・明星大学教授、百地章・日本大学名誉教授など、そうそうたるメンバーが名前を連ねる。小間澤氏も日本会議政策委員として、憲法改正の運動方針などに関与しているとみられる。
だが、日本会議もまた、これまで散々「伝統的家庭を崩壊させ、不倫の勧めになる」などと言って夫婦別姓批判を展開するなどしてきたのではなかったか。その団体で要職を担う人物に不倫疑惑とは、まったく自己矛盾も甚だしいだろう。
さらに、今回、小間澤氏の行動に対して神社界内部から強い批判が巻き起こっているのは、例の「神社本庁不動産不正取引疑惑」も大きく関係している。本サイトも追及してきたこの土地不正取引だが、神社本庁は疑惑を解明するどころか、内部告発した元総合研究部長・稲貴夫氏を懲戒免職に、田中総長らから契約をめぐる圧力をかけられたなどと主張した当時の財政部長・瀬尾芳也氏を降格処分にしてしまった。
そして、今回、不倫疑惑が報じられた小間澤氏はこの二人の処分の事務責任者なのだ。稲氏と瀬尾氏はその後、処分無効等を求めて東京地裁へ提訴したが、小間澤氏はこの裁判でも「処分は妥当」などとする被告・神社本庁側に立って陳述書を提出している。小間澤氏は陳述書でこんな大仰な口上を述べている。
〈(神社本庁は)単なる事務組織ではありません。当然に神職としての立場での行動が常に求められるとともに、職員は包括宗教団体の構成員として神社神職の手本となるべき存在です。〉
〈被告(神社本庁)が厳正に人事処分することが出来なければ神社界における権威は失墜します。そうなれば全国の神社を率いて神社神道を教化し育成する包括宗教団体としての機能もマヒすることとなります。日本の神社神道の信仰活動も危殆に瀕することとなりますので原告らに対しては厳正な厳しい処分がなされて当然と思います。〉
ようするに、「神社界の不正を告発をした神職を処分しなければ『神社界の権威が失墜する』などと弾劾しておいて、自分は不倫をしていたのか」という声が上がっているのだ。