たとえば、2日の参院予算委員会で「高齢者は歩かない」とヤジを飛ばして批判を受けた自民党の安倍チルドレン・松川るい参院議員は、こんなツイートをしていた。
〈国難においては、責任をもって決断し、そして国民にその決断を信じて一致結束するよう鼓舞することがリーダーの役目。私は総理の真摯な言葉を信じる。我々日本人ならウィルスとの闘いに必ず勝てる。新たな働き方とICTを駆使し、危機をチャンスに変えましょう。〉(2月29日)
「新たな働き方とICTを駆使」というが、日本では新型コロナ対応をめぐってテレワークさえも正社員と非正規社員の格差を生み、中国や韓国などの国では休校中もICTの活用で授業をおこなう取り組みがなされている一方で日本は遅れだけが浮き彫りになっている。なのに、なぜ「我々日本人ならウィルスとの闘いに必ず勝てる」ということになるのか、さっぱり意味がわからないではないか。
国会議員だけではない。安倍政権擁護や右派的発言、最近ではグレタ・トゥンベリさんへの攻撃でも注目された自称・アルピニストの野口健氏も、こんな恐ろしいツイートをしている。
〈総理のお願いに「決断に至った根拠を示せ」との意見も理解できる。しかし、今や戦時中と同等だとみなすべき。細かな検証はコロナが収まった後に、今後の教訓として徹底的にやればいい。今はこの国難の最中において与野党、そして国民が一致団結するべき。痛みを伴いながらも乗りこえるしかない!〉(3月1日)
「今や戦時中と同等」って、戦時中のようなパニック状態に追い込んでいるのは安倍首相の後手後手かつ思いつきの対応のせいなのだが、野口氏は「戦時中と同等」だから「国民は痛みをこらえろ」と迫り、「検証は後でいい」と問題の本質から目を逸らせようとするのである。
安倍首相も2月29日の会見で「よく見えない、よくわからない敵との戦いは容易ではありません。政府の力だけでこの戦いに勝利を収めることはできません」と新型コロナ対応を戦に見立て、「一人ひとりの国民のみなさんのご理解とご協力が欠かせません」と述べたが、結局、安倍首相や安倍自民党の議員、支持者たちがやろうとしているのは、「戦時中と同じだから我慢しろ」「協力しないのは非国民」という押さえつけばかり。そして、国民の生命を守るための具体策を打ち出さないために批判が起こっていることさえ、「こんな非常時に」と封じ込めようとしているのである。
だからこそ、危惧しなければならないのは、安倍首相が進めている緊急事態宣言の実施も含めた立法措置についてだ。しかも、前述した松川議員をはじめ自民党議員は新型コロナの混乱に乗じて憲法改正での「緊急事態条項」の新設まで訴え始めている。また、安倍首相にしても新型コロナを利用して総理権限の強化なでやろうとしかねない。──これは決して妄想ではない。こうしたことをやりかねないのが安倍政権の恐ろしさなのだ。
(編集部)
最終更新:2020.03.04 09:54