個人消費の大幅下落を考えても、景気底上げにはつながっていないのはあきらかだが、しかし、安倍首相はこの問題を追及されると、「約4割が売り上げに効果があったと回答している」と答弁(2月6日衆院本会議)。失敗だったとは絶対に認めようとしないのだ。
先月倒産した山形県で唯一の百貨店「大沼」の長沢光洋・代表取締役は会見で「(消費税率引き上げのあった)10月以降、売上高が前年比で3~4割減少した。異次元の落ち込みで、一体何が起こっているのかわからないほどだった」と述べたが、それでもGDPマイナス6.3%という現実を直視せず「今後とも内需主導の緩やかな回復が継続していく」などと言い張る安倍首相……。この男こそが、新たな不況をつくり出してしまったのである。
だが、安倍首相も、いくら無能と言えども、こうした不況が起こることは予想できたはずだ。実際、安倍首相のブレーンのひとりだった藤井聡・京都大学大学院教授は、内閣官房参与として消費税引き上げ反対を主張していた。
いや、安倍首相自身も、2014年の増税の影響が長引くなか、政権維持のために一時は増税を見送ろうとしていた。しかし、森友学園問題での公文書改ざんで、態度を一転させたのだ。
森友問題で財務省は安倍首相の答弁に合わせるかたちで決裁文書の改ざんに手を染め、しかも、その事実が明るみに出るとすべての罪を財務省官僚がかぶった。これによって、官邸の関与は覆い隠され、安倍首相は政権の崩壊を免れた。つまり、森友問題で財務省につくった「借り」を返すために増税に踏み切ったのだ。
国民の生活に深刻なダメージを与えることがわかっていながら、自分のスキャンダルをもみ消そうと動いて改ざんの責任を引き受けた財務省に「褒美」として増税を差し出す──。この国をよりよくする、安定させるということよりも、安倍首相が自分の疑惑をかぶらせたことのツケを払うほうを選んだ結果、いま、多くの国民が苦しい生活を余儀なくされているのである。