首相官邸ホームページより
年頭会見でも安倍首相が自ら一切言及せず無視した「桜を見る会」問題。テレビでも取り上げられることがほとんどなくなったが、ここにきて重大な問題を菅義偉官房長官が認めざるを得なくなった。招待者名簿について、菅官房長官は「ルールに基づいて適切に保存・廃棄している」と説明してきたが、内閣府が「保存期間1年の行政文書」と述べてきた2013〜17年度の招待者名簿が、行政文書ファイル管理簿にも廃棄簿にも記載せず、さらに廃棄前に義務づけられている首相の同意手続きもなかったことが発覚したのだ。
ようするに、公文書管理のルールをことごとく破った違法行為がおこなわれていたわけだが、当初は「省令違反のようなもの」などと言い張っていた菅官房長官も、10日の会見でようやく「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だった」と違法行為であることを認めたのだ。
言っておくが、これは森友公文書改ざん問題につづく公文書管理のあり方、国民の知る権利を根底から揺るがす国家的犯罪だ。菅官房長官は違法性を認めながらも「事務的な記載漏れ」などと宣っているが、たんに管理が杜撰だったのではなく、安倍政権による意図的な隠蔽であることは疑いようもない。
ここまでくると、いかに安倍政権下の招待者名簿の中身が「ヤバい」ものなのか、おのずとはっきりしたようなものだが、その「ヤバい」理由のひとつが、またも判明した。
それは、2018年開催の「桜を見る会」が、安倍首相の総裁選運動に利用されていた、という疑惑だ。
通常、地方議員の「桜を見る会」の招待は、道府県連の幹部クラスしか招待されないというが、なぜか2018年は一般の地方議員も招待されていた。そこにはカラクリがあり、じつはこの年、自民党は「桜を見る会」の前日に、港区のザ・プリンスパークタワー東京の宴会場で「都道府県議会研修会」なる催しをはじめて開催。ここに地方議員約800人が招待されており、これが翌日の「桜を見る会」とセットになっていたのではないかと指摘されてきたのだ。
実際、2018年の「桜を見る会」開催からしばらく経った同年5月4日、読売新聞朝刊に掲載された「揺らぐ1強」という連載記事では、こんなふうに記述されていた。
〈葉桜を眺めながら、自民党衆院議員の一人は思った。
「これは党総裁選を意識した地方の『党員票』対策の一環なんだな」
4月21日、東京の新宿御苑で開かれた安倍首相主催の「桜を見る会」。毎年、多くの芸能人やスポーツ選手らが招かれ、華やかなムードに包まれる。すでに桜が散っていた今年は、地方議員の姿が目立った。
北関東の党県連関係者は「県連幹事長ら幹部に加えて、今年は一般の県議まで首相から招待状が届いた」と驚いたように語る。党員とじかに接する都道府県議らの政権評価は、総裁選の党員票に影響を与える。
前日には、都内のホテルで、約800人の地方議員を集めた党主催の研修会が開かれた。安倍は財務省などを巡る一連の不祥事を陳謝。党の顧問弁護士も登壇し、森友学園の国有地売却問題を巡り、「安倍昭恵さんが関係したとの報道があるが、事実と違う」と火消しした。〉
しかし、一体どれくらいの地方議員が「桜を見る会」に参加していたのかは不明だったのだが、この疑問に迫ったのが「しんぶん赤旗日曜版」1月12日号。同紙では、直接取材や地方議員のSNS・ブログなどを調査、2018年の「桜を見る会」に参加していたことが確認できた自民党地方議員の数が121人にものぼることを伝えたのだ。
無論、今回判明した「桜を見る会」に参加した地方議員121人という数は氷山の一角にすぎない。というのも、昨年12月14日付けの毎日新聞の調査結果では、京都、福島、滋賀という3府県では、〈府県連所属のほぼ全府県会議員が招待されていた〉といい、〈大阪や岐阜で「研修会に出席すれば『見る会』に出られた」との回答があった〉〈「希望すれば見る会に出席できる」「奥様も一緒に」と呼び掛けていた〉とも報告されているからだ。しかも、この2018年が「特例」だったことは明らかで、しんぶん赤旗の取材に対し、ある大分県議は「招待されたのは18年だけ」と証言している。