外国特派員協会で会見する山口敬之氏(日本外国特派員協会オフィシャルサイトFCCJchannelチャンネルより)
一昨日19日、伊藤詩織さんの主張が認められた東京地裁判決を受けて、元TBS記者・山口敬之氏と伊藤さんがそれぞれ日本外国特派員協会で会見をおこなった。最初におこなわれた山口氏の会見では伊藤さんも記者のひとりとして参加していたのだが、山口氏は本人が目の前にいるというのに「彼女は嘘つきの常習犯」などと醜い主張を繰り広げた。
さらに、逮捕寸前に中村格・警視庁刑事部長(現・警察庁官房長)が逮捕を取り消した問題について、海外の記者から安倍首相や菅官房長官ら安倍官邸の関与を問われた山口氏は、「政治家、権力者、警察、誰に対しても助けを求めたことはありませんし、逮捕状が出ていることすら知らなかった」とシラを切った。
しかし、所轄署が扱うこんな事件に警視庁刑事部長が介入してきて、逮捕直前にストップをかけるなんて常識で考えてありえないだろう。中村氏は管義偉官房長官の元秘書官で“懐刀”といわれていた人物だが、警察幹部がここまで露骨な動きをするというのは、よほどの政治力を持った人物が間に入っているとしか考えられない。
また、「週刊新潮」(新潮社)からこの事件について問い合わせされた際、山口氏は「北村」という人物に転送するつもりのメールを誤って「週刊新潮」に送ってしまっているのだが、この「北村」が内閣情報調査室のトップである北村滋内閣情報官(現・国家安全保障局長)で、取材の対応を相談したのではないかという疑惑についても、「弁護士だった父親の知人の北村さん」と苦しすぎる釈明をおこなった。だが、そのメールの文面はこうだ。
〈北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。
伊藤の件です。取り急ぎ転送します。
山口敬之〉
こんなメールを父親の知人に送るだろうか。しかもその人物が「弁護士か」と問われると「それは申し上げません」とシャットアウトする様子からは、疑惑は払拭されるどころか深まったと言わざるを得ない。
しかも、時間をおいて同じ場所でおこなわれた伊藤さんの会見では、安倍官邸と山口氏の関係の深さを示す新たな情報が出てきた。
じつは、ある人物から伊藤さんのもとに情報提供があったといい、その内容はこういうものだった(伊藤さんはおもに英語で会見をおこなったため、伊藤さん発言部分は編集部による訳)。
「その方(情報提供者)がこんなことを教えてくれました。2015年、安倍首相はアメリカを訪れていますが、そのとき笹川(財団)も関わっていたそうです。そして、同じ2015年の10月に官邸から、SPF USA(Sasakawa Peace Foundation USA/笹川平和財団米国)で安倍首相が講演をおこなった見返りとして、ワシントンDCのイースト・ウエスト・センターに山口敬之氏を派遣してほしいとの要請があり、山口敬之氏の派遣について稟議を起案するように指示があったそうです。
怪しいとその方は感じたそうです。というのは、こんなイレギュラーな要請はそれまで一度も聞いたことがなかったからです。それで、このことがずっと引っかかっていて、その後、私と山口氏の事件を知り、このことに思い至ったそうです」
じつは、以前から「安倍首相周辺がTBSを辞めた山口氏にシンクタンクの仕事を世話したらしい」という話があがっており、「週刊新潮」の第一報の少し後、本サイトもそのことを記事にしていた。だが、今回、伊藤さんにもたらされた情報によると、これは安倍首相が笹川平和財団で講演したことの見返りに、官邸が笹川平和財団に対して山口氏をアメリカの独立研究機関イースト・ウエスト・センターに派遣するよう求めた、というのである。
たしかに、伊藤さんの話のとおり、安倍首相は2015年4月26日から5月3日まで訪米し、28日にはオバマ大統領と日米首脳会談をおこない、翌29日には連邦議会上下両院合同会議で演説。この演説のなかで国会で議論もはじまっていなかった安保法制をこの夏までに必ず実現すると約束したのだが、この演説のあと、安倍首相は過密スケジュールであるにもかかわらず笹川平和財団主催のシンポジウムに出席している。
また、本サイトが調べたところ、笹川平和財団はイースト・ウエスト・センターの「日米相互依存関係の発信強化」事業に助成をおこなうなど協力関係をもっている。そして、イースト・ウエスト・センターのHPをみると、山口氏が2016年に客員研究員として紹介されていることが確認できた。ちなみに研究テーマには「安倍首相による日米関係への多元的な新しいアプローチ」「ベトナム戦争と戦後の歴史的研究」が挙げられている。