講演後の質疑応答では、「国際人権規約の紹介は非常に重要な指摘だ」と切り出した報道関係者から、こうした対韓強行外交をめぐる外務省の対応について、以下のような質問があった。
「浅井さんは外務省のOBでいらっしゃいますよね? 同じ(外務省)条約局とか、このことについて職務として関わった公務員がいるはずですよね? 一番先にそういうことを言わないといけない人間(外務官僚)が沈黙している状況は、どうお考えになっているのか? つまり浅井さんたちの考えが後輩たちに引継がれなかったのか? 今の外務省の役人たちがなぜ政権の為政者たちに対して諌めたり、『こういうことだ』と(言わないのか)。知識もあるはずなのになぜできないのかと思うか?」
この質問に対して、浅井氏は二つの要因をあげた。
「一つは、私が外務省にいた頃までの条約局長は今の天皇の奥さん(雅子妃)のお父さん、小和田(恆・ひさし・外務事務次官)さんまでは、いわゆる戦前世代なのです。戦争体験をはっきり意識した人たちだが、それ以降の『ポスト小和田』で非常に変わった。小和田さんまでの条約局と、それ以降ではガラッと質的に転換したことが事実としてあると思う。
もう一つが外務省だけではなくて中央官庁すべてに共通することだが、要するに民主党政権の時に高級官僚の人事権を官邸に集中することをやった。それが見事に安倍政権によって利用されている。要するに高級官僚で『俺は出世したい』『上に立って仕事をしてみたい』という人は官邸の顔色をうかがわざるを得ない。官邸に楯突いた人は見事に外されている」
続いて、浅井氏はメデイアの“大本営化”も、国際人権規約の存在を無視する安倍首相の世論操作(情報統制)を許す要因としてあげた。
「今、情報入手源は多様化している。しかし結局はマスメディアがこぞって政府の情報を垂れ流せば、ネット情報で逆のことを言う人がいるかも知れないが、やはりコンセンサスとしてはマスメディアが流す情報に集約されていく。これらも大きな問題だ」
たしかに「アナクロニズム(時代遅れ)の歴史修正主義者」と呼ぶのがぴったりの安倍首相が「国益毀損の対韓強硬外交」「反日」などと批判されないのは、マスメデイアが安倍政権にとって不都合な真実である「国際人権規約」を過去の外務省答弁と共に報道しないからだ。
これ以上、日韓関係の悪化や経済停滞を長引かせてはならない。日韓首脳会談を前に、マスコミは自らの報道姿勢を見直す必要があるのではないか。
(横田 一)
最終更新:2019.12.05 01:44