政治を扱うワイドショー・ニュース番組に進出するタレントと、その取り込みを図る政治権力という構図は、まさに安倍政権と吉本興業の“癒着”めいた蜜月と酷似している。周知のように、吉本芸人も政治を扱う地上波のテレビでコメンテーターをしており、松本人志や小籔千豊などその多くが“安倍応援団”と化している。だが、吉本芸人とジャニーズタレントで異なるのは、メディア側の扱い方だ。芸能界の“ジャニーズタブー”に守られているジャニーズタレントたちは、癒着も失言も偏向も一切批判されることがない。さらにジャニーズアイドルの持つソフトイメージは、脂ぎった吉本オヤジ芸人たちとはまた別のターゲット層にも影響力を持つだろう。
ようするに、安倍首相からすれば、ジャニーズ事務所は、メディア掌握による世論形成のための絶好の相手なのだ。実際、安倍首相はTOKIOの面々と昨年末官邸で対談したのに続き、今年5月には会食。さらにG20大阪サミット前日の首脳会談の合間をぬって関ジャニ∞・村上のインタビューを受けている。このように、すでに積極的なアプローチを仕掛けている。11月の「国民祭典」での嵐起用、そして今回、安倍首相が嵐のコンサートに直々に訪れ、SNSで盛大に「感謝」をアピールしたのも、まさにそうした欲望がダダ漏れになっているということだろう。
また、ジャニーズ事務所にも変化がある。ジャニー・メリー体制時代は政界とは一線を引いてきたジャニーズだが、現在のジュリー副社長はむしろ政治権力との関係構築に積極的になっている。これは嵐世代以降、国民的グループを育てられていないジャニーズから見ても、政権との関係を背後にすれば、政府系のPR事業はもちろん、今後は若手や“格落ち”のタレントをどんどんニュースやバラエティに送り込むことができるようになる、という計算があるからだろう。安倍首相に取り込まれたジャニーズのアイドルたちが、国策の“大本営発表”をメディア中で垂れ流す。そんな悪夢のような未来は、もう目の前に迫っているのかもしれない。
(林グンマ)
最終更新:2019.12.03 11:59