モーリー氏はまず、「今回の追及っていうのはゴシップのレベルにまで向かっているような気がする」「安倍さんが嫌いな人には刺さる追及なんですけども、安倍さんを消極的に、ゆるく、民主党よりはマシだということで支持している人にとっては、あんまり影響力は与えない追及」とコメント。税金の不当な使い方に国民が怒ることに、安倍嫌いも好きも関係ないはずだが、さらにこうも述べたのだ。
「透明性がリストのなかになかった、なかに怪しい人が紛れ込んでいた、私物化していたっていうのは、どっちかっていうと首相とそのまわりで、なんていうのかな、不透明な利益を得ている人へのやっかみみたいなものもちょっと入ってくるんですよ。だから、社会のなかに、そういう良い思いをしている人へのやっかみや憤りがマグマのように溜まっていて、そこに対してちょっと餌をあげている気がするんですね」
「政治・税金の私物化」が問題になっているのに、「安倍嫌いがやっかんでいる」「野党はそこに餌をあげている」って……。ようするに、総理大臣が国民の血税を自分の支持者や地元有権者の接待に使っていたのを問題とすること自体を「やっかみ」で切り捨ててみせたのだ。
しかも、モーリー氏の驚きの発言はまだつづく。その後、こんなことまで言い出したのだ。
「(「桜を見る会」の)完璧な運営っていうのはできないと思うんですよ。たとえば、あまりにも広く、ファンクラブのように『桜を見る会』を広げちゃった結果、変な人が混ざっていたということであれば、これは渋谷の交差点にどれくらい法律を守っていない人がいるかみたいな話になってきて。ちょっと極端な言い方すると」
「与党は今後(招待者を)きちんと透明化すると思うんだけど、いままでの古い体質で、山口県で(安倍首相を)支持したら呼んでもらえたっていう、お互いに手を握り合っている匂いがするわけですよね。ところがそれによってうまくいっている部分もあったわけだ。そこをまるごと……もうちょっと大枠で見る必要もあるんんじゃないかと思うんですよ」
おい、いつから渋谷の交差点は安倍首相主催イベントの会場で、招待者を呼ぶようになったんだ。しかも、「桜を見る会」の実態は安倍自民党が地元有権者を税金で買収していたようなものだったことが判明したのに、「うまくいっている部分もあった」と肯定してみせるとは。「うまくいっていた」のは、安倍首相を筆頭とした安倍自民党の政治家たちの選挙活動ではないか。
番組では、モーリー氏の隣にいた小島慶子が「自分の税金がどういうふうに使われているんだろうか、自分にとって知るべき情報がちゃんと管理されて保存されてちゃんと公開されるのか、自分にとって必要な説明をちゃんと政治家が誠実にするのか、っていうふうに、“自分にとって”で考えたほうがいいと思う」「税金をおさめている人、全員に関係している問題」と根本的な指摘をおこなったが、しかし、この小島のコメントにも、加藤は「当然そう。でも、じゃあ、与党が悪いのかって話になる。そうなると」などと言い出す始末。
招待者数を増やし、予算も3倍超まで増加させたのは安倍政権であって与党が悪いに決まっているのだが、さらにコメンテーターで経営コンサルタントの坂口孝則氏が「国会が1日空転するだけで数千万円の費用がかかる」と口にすると、加藤は「そっちの考え方もあるのね。今回の税金って、小島さんのおっしゃっていることも当然わかるし、そのとおりなんだけど、じゃあ空転していることでお金かかってるのどうする? 税金だよね、みたいなこともあるのね」と述べたのだった。
ちなみに、「桜を見る会」の追及で国会が空転した日はないが、安倍首相入りの集中審議開催を与党が拒否していることから、野党は対抗策として明日以降、審議拒否する予定になっている。当然だ。なぜなら、いま持ち上がっている公職選挙法や政治資金規正法違反などの疑惑について説明できるのは、安倍首相ただひとりだからだ。つまり、国会を空転させようとしているのは与党なのに、それを加藤は“野党が税金を無駄遣いしている”かのようにまとめあげてしまったのだ。