しかも、こうした自己宣伝の事前リークは、警視庁組対5課だけではない。先月21日に判決が出たばかりの元KAT-TUNの田口淳之介と女優の小嶺麗奈の大麻事件では、厚生労働省管轄の麻取(関東信越厚生局麻薬取締部)だったが、なんと麻取がふたりの自宅を家宅捜索したときの動画をマスコミに提供していたことが発覚。判決が数カ月延期されるという事態も起きている。
「このとき麻取は、自宅内の捜索の様子に加え、ふたりに手錠をかけ連行に至るまでの映像を、未編集のままテレビ制作会社に提供。当初の判決予定日にフジテレビで放送される予定だったと言われています。ところが、検察がその動きをキャッチし、激怒。放送が頓挫し、逆に『捜査が適正だったか検証が必要』として判決が延期されたんです」(ワイドショー関係者)
しかし、多くのマスコミは、保釈時の田口の土下座謝罪や法廷プロポーズなどを大々的に報じていたにもかかわらず、この捜査機関とマスコミの癒着問題はアリバイ的に報じただけで、追及する動きはまったくなかった。
また、世論のほうも、こうした捜査機関の職権乱用にあまりに無批判だ。清原や田口のケースでも、今回の沢尻のケースでも、「悪いことをしたのだから撮られて当然」などという声のほうが圧倒的に多い。のちに不起訴処分になったASKAのケースですら、「1回逮捕されてるし」「そもそも疑われるようなことがあるのだから仕方ない」「クロと証明できなかっただけで無実ではない」などとASKAに対する同情の声も、報道に対する批判の声もほとんどない。
薬物犯罪について、厳罰・排除よりも治療・包摂が必要という議論も以前よりは周知されるようになっているが、世論の大勢はむしろ逆で、出演シーンのカットや映画公開中止、DVDやオンライン動画の販売が停止になったり、反応はより過剰になっているし、厳罰論や排除論もより強化されている。実際、今朝の『サンデー・ジャポン』(TBS)で太田光やテリー伊藤が沢尻の女優復帰について語ったことが、ネットでは大批判を浴びている。
他罰感情の高まりに加え、もともと国家権力や監視社会化への無防備さも手伝って、警察権力の横暴とその片棒を担ぐマスコミに馴らされ、完全に麻痺してしまっているのだ。
この他罰主義と警察国家化のエスカレートの先に何があるのか。国民はその恐ろしさを本当にわかっているのだろうか。
(林グンマ)
最終更新:2019.11.17 11:24