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猪瀬直樹元都知事が五輪招致でついた「温暖」「理想的」の嘘を問われ「プレゼンなんてそんなもん」 柳澤秀夫が怒りの反論

 しかし、この日の柳澤氏はこんな詭弁にまったくひるまなかった。逆に「僕は東日本大震災の被災地のひとつ、福島の出身」として、猪瀬氏に対してこんな本質的な問いかけを行なった。

「招致のときのプレゼンテーションで「復興五輪」ということを明確に打ち出していましたよね。(中略)でも、復興五輪という言葉すら、もう希薄になってしまっていることに対して。猪瀬さんがおっしゃった、プレゼンテーションというのはそんなものだと言われてしまうとですね、あの言葉にひとつの期待をしていた国民の一人からすると、そんなものなのかなと残念に感じてしまう。おっしゃったんですよ。温暖だと言わないと招致できないからって、酷暑なのに。プレゼンテーションというのはそんなものだとさっきおっしゃった」

「温暖」だけでなく、「復興五輪」という大義名分も、単なる招致のための嘘だったのではないか。そう訴えたのだ。

 柳澤氏がこう言うのも、当然だろう。招致段階では東日本大震災からの復興をテーマとした「復興五輪」という大義が掲げられていたが、いまではそのテーマは完全に忘れ去られている。

 経済効果重視と五輪至上主義の結果、「復興五輪」どころか、オリンピックは復興を妨げる原因ともなっている。五輪関連の建設ラッシュなどのせいで労務単価が上がり、東京の工事費は高騰しているからだ。

 2015年9月25日付毎日新聞の報道によれば、〈工事原価の水準を示す「建築費指数」(鉄筋コンクリート構造平均)は、05年平均を100とすると今年7月は116.5。東日本大震災前は100を下回っていたが、五輪決定後の13年秋から一気に上昇〉したという。挙げ句、〈復興工事が集中している被被災地では人手不足に加え、建築資材費の高止まりにより採算が合わず、公共工事の入札不調が相次〉いでいるというから、五輪開催がむしろ被災地の復興を妨げているのだ。

 復興五輪がスローガンでしかないことは、2013年、ブエノスアイレスで行われたIOC 総会の最終プレゼンで、安倍首相が福島原発事故問題について「アンダー・コントロール」と大嘘をつき、竹田恒和JOC会長(当時)は「東京と福島は250キロ離れている」と福島切り捨て発言をした時から指摘されていたが、現実はもっと酷いことになっている。

 柳澤氏といえば福島出身で、有働・イノッチ時代の『あさイチ』(NHK)でも被災地の問題を継続的に取り上げてきた人物。こうした東京五輪の被災地軽視に忸怩たる思いを持っていたのだろう。そこに、猪瀬氏が「プレゼンテーションなんてそんなもん」と、招致のためなら嘘をつくのは当然と開き直ったことで、普段温和な柳澤氏もさすがに怒りを隠しきれなかったということだろう。

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