ネット上で憶測が飛び交っているように、脳裏をよぎるのはやはり、「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」が右派政治家やネトウヨたちから攻撃を受け、脅迫やテロ予告によって展示中止に追い込まれた事件だろう。
改めて言うまでもなく、「あいちトリエンナーレ」は、8月1日の開幕早々から“慰安婦像”を展示しているなどとして、猛烈なバッシングと圧力にさらされ、その模様はマスコミにも盛んに報じられた。
そして、「表現の不自由展・その後」が一時中止に追い込まれたのが、8月3日の土曜日。「しんゆり映画祭」をめぐって事態が急転した8月5日は、その週明け月曜日というタイミングだ。内容に慰安婦問題が含まれていることを考えても、「あいトリ」の事件が『主戦場』の上映予定取りやめに影響を与えたと疑われるのは、いたって当然だろう。
本サイトの取材に対し、川崎市市民文化振興室の担当課長は、8月5日に映画祭側へ電話したことを認めた。「主要な複数の出演者から上映中止の裁判を提起されているものについて、(映画祭での)上映はどうなのか」と同室職員から「懸念」を伝えたという。
担当課長によれば、7月下旬映画祭側から、『主戦場』について「出演者が上映中止等を求めて提訴している」との連絡があり、それを受けて室内で検討を始めた。映画祭側へ上記「懸念」を伝えたのが8月5日であったことは“偶然”であると主張した。
「私たちは、主催者から情報提供があったことに対してお答えしただけです。そもそも、7月下旬に主催の「KAWASAKIアーツ」さんから連絡あって、初めて『主戦場』についての説明も少し受けました。その後、共催者として裁判の件を室内で検討したうえで、懸念をお伝えしたのが、たまたま8月5日だったということです」(担当課長)
また、担当課長は「市が介入した」との見方と、「あいトリ」をめぐる脅迫やテロ予告の影響を否定した。
「主催者はアーツさんですから、その運営委員会で最終決定したのではないかと思っています。私たちは『主要な複数の出演者から上映中止の裁判を提起されているものについて上映はどうなのか』と言っただけで、内容について言ったつもりはありません。当然、そういう話にもならないということです。あいちトリエンナーレについては『何かそういうこと(脅迫等)があったんだね』っていう程度しか知りませんでしたし、室内での検討の際もその件はまったくあがっていません」(担当課長)