しかも、恐ろしいのは、マスコミまでがそうしたオカルト的な言説に乗っかってしまっていることだ。即位礼が憲法の政教分離の原則や国民主権に抵触するという批判を一切することなく、こぞって即位礼を中継した民放とNHK。これらのテレビ局も、東京の空に虹がかかったことをまるで“神秘”であるかのごとく取り上げていた。
NHKでは、スタジオの久禮旦雄・京都産業大学准教授が、昭和天皇も「晴れ男」だったとして「エンペラーウェザーと言われた」などと解説。また、『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~』(CBCテレビ)でも、コメンテーターの竹田恒泰氏が「上皇陛下も天皇陛下も晴れ男」などと触れ回っていた。
実際には、行幸時に雨が降るときもあれば、荒天で行事を中止することだってある。それをNHKまでが「天皇の神格化」を全面肯定するような解説を平気で流すとは……。NHKは今年春にも「皇室の祖先は天照大神」と神話を史実のように報道して批判を浴びたが、安倍政権に忖度するあまり戦前回帰になんのためらいもなくなってしまったようだ。
だとしたら、なんどでも繰り返さなければならない。150年前、この国の為政者たちは天皇を現人神にして政治利用した。その結果、侵略戦争で国内外に夥しい犠牲者を出し、あわや「日本」という国がなくなる一歩手前まで暴走した。戦後、人間である天皇は「象徴」として再定義されたが、今回の代替わり儀式にかこつけた「天皇のパワー」なる言説は、まさにその「日本は天皇を頂点とした万邦無比の神国」なる戦中のカルト思想と地続きのものだ。
私たちは、歴史を捻じ曲げ民主主義を覆そうとする安倍政権下で、こうした声がメディアで恥ずかしげもなく堂々と語られ始めたことの恐ろしさを、きちんと認識すべきだろう。
(編集部)
最終更新:2019.10.23 06:39