一方で、朝鮮学校が無償化を除外されたり補助金を停止されたり、差別的扱いを受け、税金が使われていないにもかかわらず困ったときだけ避難所として利用されることについて、どう考えているかを聞いた。
「それはもう近隣の方々と、人として。今月27日にもふれあいコリアフェスタというのをやるんですけど、そういうイベントを始めたのも、区の第一次避難場所となったことで、地域の方々と親睦と交流を深めるために始めたんです。いつ何どき、何かがあったときに学校に駆け込んで来てもらえるように助けられるように、閉鎖的に思われてはいけないと。逆に、僕たちも近隣の方々にお世話になっていて助けてもらうこともあります。国家間はいろいろありますけど、ここには国境なし。人としての付き合い。温かく受け入れて、というかお互いですね、人として接することが重要だと思ってやっているわけで」
とはいえ、無償化除外や補助金停止を受けて避難所協定を見直そうという話が出たことはなかったのだろうか。
「ないですね。かえって、もっと身近に、近隣の方々との接触、お付き合いをしています。近くの幼稚園や保育園とも、もしも荒川が決壊したらという想定で園児にうちの学校に避難してきてもらうというような訓練もしています。そうやって地域の方々と一緒になってやっています」
東京朝鮮第4初中級学校が実際に避難所として開設されたのは、2011年東日本大震災時に続いて2回目だったが、そのときは誰も避難して来なかったので、今回がはじめての受け入れとなったという。
「今回、役に立てて本当に良かった。こういう災害は2度と起きないほうがいいですけど、近隣の方を受け入れられたこと、避難所として役に立てたことはうれしかった。もっと多くの方が来られてもよかったかなと。近くの小学校は100人以上来られて行列になっていたみたいなんです。区の防災課の方から電話があったとき、うちは受け入れられますので近くの方こっちに来られるように言ってくださいと言いました。一部で『(朝鮮学校は)避難所になっているけど水とかそういうものがないので持参してください』というデタラメというか間違った情報が流れていたのも、影響したかもしれません。学校には400名ほどの備蓄があります。毛布や炊き出しできるいろんなものが置いてあって、毎年、賞味期限切れのものは薬品も含めて交換しています」
ちなみに「水がない」という誤情報は、差別心や悪意によるデマだったのかと尋ねると、理事長はただの間違いだと思うと答えた。
そして、今回避難所として活用されたことについて、何度もこう繰り返した。
「役に立てて本当に良かった。こういう災害は2度と起きないほうがいいですけど、避難所として役に立てたことはうれしかった」
苛烈な差別を受けているにもかかわらず、「国家間はいろいろあるけど、ここには国境なし」「人としての付き合い」と近隣被災者を受け入れる朝鮮学校。その姿勢を見ていると、朝鮮学校を無償化や補助金対象から除外し、ホームレスを避難所から排除するのは「当たり前」とする日本の行政や社会がいかに非人道的であるかがよくわかるはずだ。
(編集部)
最終更新:2019.10.20 11:14