今回は、家庭教師を派遣する福岡の会社である。K氏の相談は、2回の減給、突然の解雇、残業代・最後の給与及び解雇予告手当不払い、離職に伴い120万支払う念書を理由に数万払った、というものだった。
他県在住のK氏の入社のきっかけは、知人から、同県で支店を立ち上げれば、売上の一定割合を払うと誘われたためである。K氏は条件にひかれ、研修で福岡へ。社長から、労働時間は12時~21時30分、休憩50分、日祝休みと説明。1日8時間40分・週6日の点で労基法31条1項・2項、8時間超労働で1時間休憩でない点で34条1項、賃金明示がない点で施行規則5条1項3号違反。我が国の労働者教育がお粗末なため、K氏は逃げることができなかった。
研修中、支店はなしと告げられ福岡で働くよう誘われたK氏は、混乱のあまり承諾。社宅に引っ越し、奴隷のような扱いが始まる。
初日、経理の手伝いと人事の担当を指示され、教師と約200人の顧客の管理調整、教師の研修など膨大な業務を担当することに。その結果、K氏は、毎日、11時30分から22時まで、最低11時間働かざるを得なかった。休日に研修や顧客と教師との連絡の仲介を担当させられることもあったそうである。
K氏が働き始めて気付いた会社の実態は、ホームページ等であたかも九州一円にリーズナブルな価格で専門の家庭教師を派遣できるかのように謳いながら、家庭教師のアルバイトを希望する学生に交通費も出さず遠方の家庭教師を押し付けながら利益を出しているというものであった。K氏は、嫌がる学生に遠方の派遣を押し付ける役回りをさせられたのが一番嫌だったそうである。
K氏の賃金は、基本給14万、精勤手当2万、皆勤手当1万、当初払われた変動制の業績給(数万)を入れても、労働に見合うものではなかった。しかも入社10カ月、営業でないのに賃金変動はおかしいと、業績給が2万に下げられた。
勤続1年、ある営業の獲得した客の解約が続いた際、K氏は責任者でないのに、社長から始末書を書くよう要求された。反論すると責められると思い、始末書を提出。
勤続2年、突然3カ月4万の減給。K氏は元に戻らないと感じ上司に引継後の退職を申し入れると、社長から「給与を貰ってから言うのはどうなんだ。」と即解雇。給与支払いは会社の義務であり(労基法24条2項)、労働者に退職の自由がある(民法627条)ため、社長のパワハラ体質が窺えよう。しかも、解雇の際「お前のせいで120万損害が出た。」と言われ、毎月1万払うとの念書へ署名を強要された。K氏は「署名しないのであれば、親を呼べ。」と脅迫され、署名。恐喝(刑法249条2項)なので、口実をつけ110番通報してほしかった。K氏は支払義務ありと誤解、数カ月払った。義務教育で「何かあったら弁護士に相談を」と教えてほしいと切に願わざるを得ない。
受任後、減額前の賃金を前提に解雇予告手当、最後の賃金、残業代及びパワハラを理由とする損害賠償を請求する内容証明を会社に送った。すると、K氏は受託者にすぎないので、一切の支払義務が存在しないと回答された。
K氏に、労働審判か訴訟しかない、前者は後者に比べ早く解決させやすいが、パワハラのような主張に開きがある場合前者の手続きで慰謝料は期待できない、証拠が少ないので前者では解決金が低額になる可能性が高いと説明。それでも早く解決したいとのことだったので、労働審判を申し立てた。