さらに重要なのは、イギリス大使館が否定しているのが「いかなる神社にも行くな」という発言だけだという点だ。タイムズ記事の中心は、駐日イギリス大使が「靖国訪問を問題視しした」というものだが、イギリス大使館はそれについては一切否定していない。
タイムズ紙の記事には、前述したようにイギリス国防省が「イギリス軍ラグビーチームの靖国訪問は公式訪問ではない」「英国政府は靖国訪問がいかに繊細な問題であるかを完全に理解している」ともコメントしているが、このコメントについては、イギリス大使館もイギリス大使も否定していない。
ところが佐藤は、あたかも、イギリス政府が靖国訪問を問題視したこと自体がなかったかのように印象操作したのである。
しかも、佐藤が「誤報」の根拠として持ち出したイギリス大使館のツイートには、ネグられた部分があった。ツイートには、以下のような続きがあったのだ。
〈「私たちは、ラグビーワールドカップのために訪日する多くの英国人観光客が、神社を含む日本文化の多様な面に触れることを期待しています。英国政府は靖国神社参拝に関して様々な考えがあることを理解しています」(英国大使館報道官)〉
このツイートからは、イギリス大使館が、靖国神社と日本の伝統文化としての一般的な神社とで、明確に扱いを分けていることがわかる。イギリス大使館の否定ツイートの真意は、「靖国訪問を問題ない」とするものではなく、「靖国は問題だが、他の神社は問題ない」というものだったと考えるべきだろう。
しかし、佐藤は前半のツイートをリツイートしただけで、この大使館の後半のツイート完全にネグり、あたかも、イギリス政府が靖国訪問を問題視したこと自体が誤報であったと言い張ったのだ。これこそ、フェイクの典型だろう。