あらためて強調するが、「表現の不自由展・その後」は、こうした美術作品に対する弾圧や検閲、自主規制について考えるもの、つまり〈自由をめぐる議論の契機を作りたい〉(同展公式サイトより)という思いを持つ企画なのである。作品を出展している現代美術集団のChim↑Pomは、同展公式サイトで〈ある国でのビエンナーレへの出品をキュレーターから打診された際に、主催者の国際交流基金よりNGが出た〉と明かし、このように語っている。
〈スタッフからオフレコとして理由を話してくれたのに、その内容を反映したバージョンとして今回作品を展示しちゃって本当に申し訳ないが、つまりは「安倍政権になってから、海外での事業へのチェックが厳しくなっている。書類としての通達はないが、最近は放射能、福島、慰安婦、朝鮮などのNGワードがあり、それに背くと首相に近い部署の人間から直接クレームがくる。」とのこと。〉
今回の展示会には、「NGワードをぼかすような編集」を提案されたバージョンの作品を出したという。〈「今は我慢するしかない」との職員の悔しそうな言葉に戦前のような響きを感じた〉とChim↑Pomは言うが、まさにそうした状況が、今回の同展に対するネトウヨの炎上攻撃、和田議員や松井市長、河村市長、そして安倍政権の極右政治による剥き出しの圧力で、あらためて可視化されたわけである。
もう一度言うが、「表現の自由」とは本来、権力による弾圧から人々を守るための概念だ。極右政治家たちは論外だとしても、作品を「撤去しろ」とがなり立てている一般の人々も、その行為が自分たちの「表現の自由」の首を絞めていることに気がつくべきだろう。
本サイトが2日夜、「あいちトリエンナーレ」事務局に取材したところ、広報担当者は、クレームや政治的圧力について「現段階でどのように対応するは申し上げられない」とのことだった。芸術監督の津田大介氏は、昨日の会見で「抗議電話が殺到し、対応する職員が精神的に疲弊していること」などを理由に「内容の変更も含めた対処を考えている」とした(朝日新聞デジタルより)。抗議の電話は1日だけで約200件あり、テロ予告や脅迫と取れるものもあったという。
しかし、だからこそ、こんな愚かな攻撃に決して負けてはいけない。そして、わたしたちもこの事態を前に、ただ沈黙や静観を決め込むのでは連中の思うつぼだ。いまこそ、卑劣なネトウヨや政治家たちの何倍も大きな声をあげて、「表現の不自由展・その後」の背中を強く押していく必要がある。
(編集部)
最終更新:2019.08.03 01:54