事実、安倍首相はアベノミクスの成果として「就業者が384万人増加」と誇るが、安倍政権下での非正規雇用の増加数は304万人にものぼる。しかも、総務省の「就業構造基本調査」(2017年)によると、非正規の70%が年収200万円未満だった。アベノミクスによって、多くの人がワーキングプアの状態に陥っているのである。
普通ならば、こうした政策に対する不満が高まるはずだが、この国ではそうならず「自己責任」となり、不満を述べると「わがまま」「努力不足」と叩かれてしまう……。これは安倍政権が大企業・富裕層優遇の一方で弱者切り捨て政策を推進し、そのために繰り返してきた「自己責任論」が浸透し、それに国民が慣らされてしまった結果なのだろう。
実際、7月30日付の米・ブルームバーグ紙の社説では、いかに日本が自己責任論に犯されているかが逆説的に紹介されている。
この社説では、アメリカと日本を比較し、犯罪率、違法薬物の使用件数、労働年齢の就業率などにおいて日本は〈素行が良い〉国だと紹介するのだが、にもかかわらず、日本では先進国のなかでも貧しい人が多いと指摘する。つまり、日本は暴力事件も起こさず、違法薬物にも溺れず、一生懸命働くなど真面目で勤勉なのに日本の貧困率はアメリカより少しマシな程度でドイツ、カナダ、オーストラリアなどほかの先進国に比べかなり高いということは、アメリカの保守派が考えるように「貧困は自己責任」で解決できない、と述べているのだ。
貧困に陥るのは自己責任ではない、それは日本という国が証明している──。日頃「日本スゴイ!」で悦に浸るテレビ番組やネトウヨにこそ紹介していただきたい社説だが、同時に、国民も「自己責任論」から脱却し、安倍首相が一向に向き合わない貧困・格差の問題に怒りをぶつけるべきなのではないか。
そして、そうした流れは生まれつつある。山本太郎率いる「れいわ新選組」と共産党は「最低賃金1500円」を掲げており、れいわは「年収200万円以下世帯をゼロ」とも訴えている。一方、安倍首相は「無理やり最低賃金を上げることによって失業が増えていく」などと述べているが、これはノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマンをはじめ、経済学の専門家からもすでに否定されているものでしかない。れいわや共産党が主張するように、中小企業の支援とセットで最低賃金を上げることは十分可能なものだ。
ブルームバーグの社説にあるように、貧困は自己責任ではない。生活が苦しいと声をあげた人を叩くだけで、国民の生活の苦しさを直視しない政治を温存させていれば、現状はどんどん悪くなってゆくだけだ。
(編集部)
最終更新:2019.08.02 09:44