ネット上では「放送事故レベル」などと揶揄する声も出たが、これこそが、舩後氏が国会議員になったからこそ広く伝えることができる“メッセージ”だろう。言っておくが、インタビューでは事前にすべての質問を伝え、回答をフリップなどに起こしておいて、介助者が読み上げるなりすることもできたはずだ(実際、別の質問については、事前に用意した回答が読み上げられた)。しかし、舩後議員への最初の質問については、あえて生放送で直接質問を聞き、直接言葉にして回答したのである。
この行動の裏には、重度訪問介護の制度が障害者の労働を奪うという問題を、舩後氏が最も重点的に訴えてきたということもあるだろう。だが、それ以上に、ALS患者に何ができて、何ができないのか。コミュニケーションにどれくらいの時間がかかるのか。それを隠さずに広く知ってもらいたいと考えたのではないだろうか。
れいわから当選したふたりの国会議員は、「障害者も健常者もない社会」(木村氏)、「障害があっても当たり前に地域で生きられる社会」(舩後氏)の実現を繰り返し力説してきた。そのためにはまず、本当の意味で「障害者」を「隔離」せず、全員が向き合う「開かれた社会」にしていく必要がある。ふたりの議員の生出演には、そんな意味が込められていたように思えてならない。
そして、今回、ふたりは実際に『とくダネ!』という保守的な番組を動かした。障害者というマイノリティが社会でどのような状況に置かれているか、スポットライトを当てさせた。
いわば、これまでどれだけ「税金」を注ぎ込んでもできなかったことを、ふたりは早くも実現しようとしている。権力に阿諛追従するだけの与党の新人議員に、はたしてこれだけのことができるだろうかと尋ねてみたくなる。「発信力」を活かして「社会を動かすこと」が“力のある政治家”の条件だとすれば、舩後議員と木村議員は相当のポテンシャルを有していると言っていいだろう。
しかも、二人の議員生活は始まったばかりだ。舩後氏と木村氏には、国会議員として、人々が直面する「生づらさ」をどんどん可視化していってほしいし、わたしたちもまた、そのメッセージを正面から受け止めたい。それは、安倍一強政治で進む“排除の社会”を変えられる、大きな希望だ。
(編集部)
最終更新:2019.08.01 03:26