自分では謝罪や釈明をしたくないから側近に代弁させるって、どこまで無責任で恥知らずなんだという話だが、今回の「改憲シフトのために議長交代」も、結局は安倍首相の願望を代わりにぶち上げて、世間の反応を見ているのだろう。
というのも、参院選では「改憲勢力」は非改選合わせて3分の2議席を割ったものの、「改憲勢力」の掘り起こしは着々と進行。さっそく国民民主党の玉木雄一郎代表が「私、生まれ変わりました!」「憲法改正の議論を進めていく」などと宣言して問題になったが、すでに国民民主党からは選挙で菅義偉官房長官のバックアップを受けたと言われる榛葉賀津也氏などが「改憲勢力」に加わるとみられている。
また、「戦争発言」で日本維新の会を除名された丸山穂高議員の入党が決まった「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表も「自民党がNHKのスクランブル化に賛成するのであれば改憲に賛成する」と発言しており、改憲勢力に回ることはまず間違いない。
つまり、安倍首相は憲法発議に必要な3分の2以上は確保できることを踏んだ上で、憲法審査会を強引に動かすための国会運営を可能にする方法に目を向けているのだ。
実際、すでに安倍自民党は、参院議長に麻生派で「9条改正賛成」「自衛隊を国防軍にすべき」などと主張してきた改憲強行派の山東昭子氏を据えることで調整。さらに、大島衆院議長の“後釜”としては、二階俊博幹事長の名前まで挙がっているのだ。
片山さつき氏や桜田義孝氏をはじめとして問題議員ばかりを抱える二階幹事長が、よりにもよって衆院議長って……。選挙後すぐさま安倍首相の総裁4選について「全然おかしくない」と発言して安倍首相に媚びたばかりだが、恩を売ることで派閥勢力の拡大と利権を漁ってきた二階幹事長に公正中立が求められる議長など務まるはずもなく、国会は安倍首相の好き勝手に暴挙が繰り返されることになるだろう。
憲法審査会は、その名のとおり憲法という国の基礎となる最高法規を議論する場であるため、他の委員会とは違い与野党協調を重視し、与党と野党の合意の上で開催してきた。その原則は「改憲勢力」が3分の2以上を占めたとしても守られなければならないものだ。
いや、そもそもの大前提として、参院選後におこなわれた共同通信、朝日新聞、読売新聞による世論調査では、それぞれ「今後、安倍内閣に、優先的に取り組んでほしい政策」「安倍首相に一番力を入れてほしい政策」といった質問で「憲法改正」と挙げた人の割合は共同が6.9%、朝日と読売がともに3%で、すべての社で最下位となった。ようするに、ほとんどの国民は憲法改正の議論などまったく求めてなどいないのだ。
そうした事実を無視して、国会までをも我が物顔で私物化しようと目論む安倍首相。──そうさせないためにも、今回の萩生田幹事長代行の発言は言語道断だと強く言っておかなければならないだろう。
(編集部)
最終更新:2019.07.30 12:14