しかも、自民党本部がやったのはこの通達だけではない。激戦区には、手段を選ばない選挙活動を命じたようだ。
例えば、イージス・アショア配備問題の影響を受けて自民党と野党候補が接戦を演じている参院秋田選挙区では、法律に抵触する可能性のある運動までが展開された。佐竹敬久県知事はじめ県庁職員らが勤務中、県庁内で自民党候補を応援する活動を行ったのだ。
これは、地元紙「秋田魁新報」が「秋田県庁で勤務中職員が必勝コール 知事『悪いという法律ない』」と題して報じた。
同紙によると、秋田市の県庁前で7月10日お昼の12時半すぎ、参院選候補者の選挙カーが県庁前の道路に横付けされた。そして、陣営が県庁に向かって演説を始めると、正面玄関前に、佐竹敬久知事を先頭に県幹部や一般職員、関連団体関係者らが集合。お昼休み終了の13時を過ぎ、勤務時間内であるにもかかわらず県庁敷地内で参院選の候補者陣営と一緒に、必勝を誓う掛け声を上げ、右腕を何度も突き上げていわゆる「エイ、エイ、オー」のポーズを取ったという。秋田魁新報には佐竹知事を中心に県職員とされる集団が並んで拳を突き上げる写真も掲載されている。
これは、全体の奉仕者たる公務員の政治的目的をもった政治的行為やそれをそそのかす行為を制限する地方公務員法違反に当たる可能性がある。
実際、同紙も「全体の奉仕者である公務員の政治的中立性が疑われるとして批判の声がある」と追及しているが、佐竹知事は県庁敷地内で候補者陣営と共に掛け声を上げたことについて「悪いという法律はない。あとは、見る人がどう取るかだ」と開き直ったという。秋田の地元政界関係者が語る。
「記事では選挙戦が始まったことを理由に候補者名を隠していますが、県庁幹部たちが支援したのはもちろん自民党候補の中泉松司氏です。先頭に立って気勢を上げた佐竹知事は、いま配備問題で沸騰しているイージス・アショアを誘致した当本人で、自民党支持層が基盤。県民から配備問題で激しい追及を受けると、不利とみた知事は配備見送りをにおわす態度を見せ始めましたが、『参院選向けのポーズ』であるのはミエミエ。選挙活動で早速、その化けの皮がはがれたというところです。しかし、勤務中に県庁の敷地内で県庁職員を駆り出して自民党候補を支援する行動は、公務員法違反の可能性が高く、普通ならやりませんよ。こんな露骨なことをやったのはやはり、自民党の上のほうから何かお達しや相当強い締め付けがあったとしか思えません」
安倍自民党の必死さが伝わってくるが、自民党本部は7月11日にも「ネット活用であと1票の積み上げを 党所属議員がネットで連携! リツイート・シェアで、候補者を当選させる」と銘打つタイトルの通達を出している。
本サイトはこの文書についても内容をつかんだが、「地元の候補者の投稿を必ずリツイートする」と指示し、候補者のツイッター一覧を掲載。続いて「自民党本部の投稿をリツイートする」と指示し、「アベノミクスの成果をイラスト化した『インフォグラフィック』」や「参院選の投票方法」「CM動画」「役員遊説日程」「総裁遊説動画」のリツイートなど、随分と細かい指示項目を列挙していた。
「実は、今回の自民党本部の通達はこれに限らず乱発気味で、党本部が相当焦っているのが分かる。実際、選挙戦の後半に入って安倍首相の人気が陰っているのを自民の各陣営では肌身に感じ始めたようだ」
マスコミ各社はこの週末、2度目となる「終盤情勢調査」を行う。情勢の変化を注視したい。
最終更新:2019.07.13 08:59