「安倍政権(首相)は、国民の血税と領土の一部を米国に献上するに等しい“売国奴的下僕外交(政治)”をしているのではないか」
こんな疑問が湧き上がってきたのは7月3日、山口県庁での謝罪面談を終えた岩屋毅・防衛大臣の会見での質疑応答のときのことだ。「グアムを守る、米国を守る前線基地になるというアメリカのシンクタンクの論文があるが、これで住民の理解は得られると思うか」との筆者の問いに、こう答えたのだ。
「その論文については私も拝見しておりますが、このミサイル防衛体制というのはあくまでも我が国の防衛のために行うものであり、『米国の防衛をする』という指摘は当たらないと思っているし、もとより米国は我が国よりも相当に強固なミサイル防衛体制を常にお持ちであると理解をしている」
この論文のタイトルは「Shield of the Pacific:Japan as a Giant Aegis Destroyer」(太平洋の盾 巨大な“イージス駆逐艦”としての日本列島)で、歴代自民党政権とも密接な関係を有するジャパンハンドラーの米国民間シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が昨年5月に発表したものだ。福留高明・元秋田大学准教授が昨年8月にFacebook上で要点を投稿、地元紙の秋田魁新報が福留氏のコメントと共に紹介し、広く知られるようになったが、論文の要点は「いまや日本は巨大な『イージス駆逐艦』としての役割を構築しようとしている」ことを次のように指摘する内容だった。
「日本に2箇所のイージス・アショア拠点が実現すれば、太平洋地域のミサイル防衛能力を増強する重要な第一歩となるだろう。そして、その潜在的可能性は計り知れない」
「今回、秋田・萩に配備されるイージス・アショアのレーダーは、米国本土を脅かすミサイルをはるか前方で追跡できる力をもっており、それによって、米国の国土防衛に必要な高額の太平洋レーダーを建設するためのコストを軽減してくれる。このことは日米同盟を強化するだけでなく、そのレーダーを共有することでおそらく10億ドル(約1100億円)の大幅な節約が実現できる」
この論文を読めば、誰もがこんな思いを抱くだろう。安倍首相はトランプ大統領の要請を受けてイージス・アショア購入を決定、米国防衛費節約に貢献する一方、日本国民(納税者)には莫大な請求書が付け回され、日本領土の一部(秋田と山口の陸上自衛隊演習場)を米国防衛前線基地として献上する事態にも至った、と。
山口と秋田へのイージス・アショア配備で日本列島が「太平洋の盾」となると書いてあるのに、不可解なことに岩屋防衛相は「我が国の防衛のため」と言い張った。「同じ論文を読んで正反対の認識に行き着く岩屋氏の思考回路はどうなっているのか」という新たな疑問も抱きつつ、「山口沖にイージス艦を置けば、代わりになるのではないか」と質問を続けると、再び驚くべき回答が返ってきた。
「イージス艦の場合には、どうしても船でありますので、隙間が生じることになります。(イージス・アショアのように)やはり24時間365日、ミサイル防衛に専念できる装備・部隊・施設というのは必要だと考えています」
イージス・システムは、隣国から放たれた弾道ミサイルを強力な電波を発するレーダーで軌道を割り出して迎撃ミサイルで撃ち落すものだが、海上のイージス艦に置こうが、陸上にイージス・アショアを配備しようが、基本的機能に差はない。もちろんイージス艦の場合、船の定期的な点検整備や乗組員交代が不可欠だが、予備船を用意してローテーションをすれば、隙間が生じることはない。しかもイージス艦は現在の6隻を8隻にする計画が進行中であり、山口沖と秋田沖に停泊させておけば、わざわざ陸上にイージス・アショアを配備させる必要はなくなるのは明らかなのだ。