「それに引き換え、野党は、日ごろは与党の揚げ足取り。政策の議論を重ねないまま、選挙目当てで、人気取りだけで、実現できるかも怪しいような政策を言い始める。所属政党はコロコロ変わり、対案なしで何でも反対、やることすべてがブーメラン、何度この光景を見たことか。こんな野党には、絶対に、負けるわけにはいかない……! 心からそう思います」
安倍首相を褒め称えるときは高い声でにこやかなのに、野党の批判はいかにも恐ろしいことを話すかのような低い声色でおどろおどろしく語る三原議員。 あの参院本会議での三原議員の演説は、まるで北朝鮮の最高人民会議を彷彿とさせるものだったが、今度は朝鮮中央テレビの女性アナウンサーを見ているかのようだ。しかも、じつはこの文言、問題となった参院本会議とほとんど同じものだった。
つまり、今回、安倍首相は、国会という場で安倍首相を「崇拝」し、「野党は恥を知れ」と攻撃した三原議員による演説を、諫めるでも反省するでもなく、政見放送で“再現”させたのである。
実際、「こんな野党には絶対に負けるわけにはいかない」と三原議員が述べたあと、安倍首相は笑顔でこんなことを言い出した。
「この前の三原さんの参議院本会議での演説は、すごい迫力でしたね。国民の代表としての自覚、国会で議論に臨む姿勢。非常に印象的でした」
三原議員の演説は批判を浴びたが、一方でネトウヨや安倍応援団は「まったく正論」「スカッとした!」「流石女番長」などと絶賛していた。ようするに、安倍首相はお友だちの極右ネットテレビ番組に出演するだけではなく、ついに政見放送でまで、そうしたネトウヨ受けを意識しはじめたのだ。
いや、これはネトウヨ受けというだけではなく、“自分への礼賛と自分の敵への一方的な攻撃”という独裁国家のプロパガンダさながらのやり方がごく普通に受け入れられる国にしようとしているのだろう。そうでなければ、とてもじゃないが、こんな知性のかけらも感じられないような酷い内容を政見放送として用意するはずがないからだ。
野党&メディア攻撃本配布問題といい、選挙を通してどんどんあきらかになっていく安倍自民党の気持ち悪さ……。しかし、最大の問題は、国民がこれに慣れてしまうことのほうだろう。
(編集部)
最終更新:2019.07.09 12:54