いや、恐ろしいのは言論だけではない。「自衛隊で若者の精神を鍛え直せ」と考えている連中は、政治家、権力を握る自民党・安倍政権のなかにうじゃうじゃいるのだ。
その代表例が元防衛大臣の稲田朋美衆院議員だ。稲田氏は「正論」(産経新聞社)2011年3月号での元空将・佐藤守氏との対談で「徴兵制」に高い関心を示し、佐藤氏が現状では必要ないと言っているにもかかわらず、こう述べている。
「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらう制度はどうですか」
「『草食系』といわれる今の男子たちも背筋がビシッとするかもしれませんね」
また、2015年には上の発言について「女性自身」(光文社)2015年11月10日号に問われて、「でも、たとえば自衛隊に一時期、体験入学するとか、農業とか、そういう体験をすることはすごく重要だと思います」「(自衛隊体験入学は)まあ、男子も女子もですね」と変わらぬ態度をとっている。
「教育機関」でもなんでもない自衛隊入隊を「教育の一環」として強制化する──。徴兵制そのものであり、軍国主義国家復活丸出しだが、しかしこれこそが、右派政治家の本音なのだ。
右派メディアや政治家はふだん、護憲派を「頭がお花畑」と攻撃し、「日本を守るためには現実的な政策が必要だ」としたり顔で語っているが、実は連中が改憲や軍備増強を叫んでいるのは「日本を守るための」などではない。連中の最大の目的は、「軍」を復活させることで、国民が国のあらゆる命令に従い、国家のために命を捧げるように作り変えたい、それこそ「精神を鍛え直したい」ということなのだ。
今回、「引きこもり」が問題の俎上に上がったことで、その本音は頭の悪いメディアと言論人の口からだだ漏れになった。しかし、同じことを考えている連中が権力中枢にその何倍もいることを、私たちは知っておくべきだろう。
(編集部)
最終更新:2019.06.11 10:44