ところが、こうしたプリウスの不具合報告の多さや重大なリコールについて、新聞やテレビなどのマスコミが報じることはほぼ皆無だ。そして当然のように、いま、ネット上で騒がれている“プリウスミサイル”説もまったく検証しようとしない。というか、「高齢者の運転」は連日のようにとりあげるにもかかわらず、「事故車はプリウス」ということには触れようとすらしないのである。
前述の6月4日福岡事故での“プリウスミサイル”デマも、マスコミがそれまでの事故でプリウスの車名を意図的に隠しているように受け止められていたことが、ネット上でのいわゆる“オルタナティブファクト”に繋がった部分も大きいのではないのか。
実は、マスコミが暴走事故報道に関してプリウスの車名を報じないのは、トヨタによる莫大な広告費の存在、つまり“スポンサータブー”があるからに他ならない。
もともと、トヨタは「世界最大の自動車メーカー」として、国から手厚い保護を受けると同時に、メディア関係者のなかでも長らく絶対的なタブーになっていた。実際、トヨタ車はこれまで何度も国内で欠陥が発覚し、その度に大量のリコールをおこないながら、新聞は数行のベタ記事を申し訳程度に載せるだけ、テレビにいたってはほとんど無視といった状況で、大々的な追及や検証をする動きはなかった。
例外は2009〜2010年、レクサスやプリウスなどの欠陥問題に関する報道だが、これはアメリカで激しい追及が起き、豊田章男社長が米下院の公聴会に出席して謝罪する事態に発展したため、日本でも報道せざるをえなくなったにすぎない。
日経広告研究所の調査報告によると、2017年度のトヨタの広告費は5096億円でトップ。しかも3年連続のトップの地位を誇っている。2位ソニーの4071億円と比べてもトヨタがいかに莫大な広告費を投じてメディアに出稿しているかがわかるだろう。相次ぐ重大事故が社会の注目を浴びるなか、マスコミ報道ではプリウスの名前が避けられている(そして、プリウスではない事故のときだけ「ネットのデマ」だと強調する)のも、こうした“スポンサータブー”が染み付いているからとしか思えないのだ。
しかし、「高齢ドライバーによる暴走事故」がここまで社会問題化している以上、本当の原因と事故抑止のため、タブーを排した公正な検証が必要なのは間違いない。マスコミは今回の“プリウスミサイル”説をネット上の流言飛語として無視するのでなく、大スポンサーであるトヨタにもメスを入れるべきだ。
(編集部)
最終更新:2019.06.07 10:46