このような態度では、いくら無条件で対話の道を探ると言っても、どこまで真剣なのかと疑問視されても仕方がないだろう。
もちろん、北朝鮮の脅威を煽りに煽る一方で圧力一辺倒の“勇ましさアピール”に勤しんできた安倍首相が、無条件という日朝首脳会談のハードルを低く再設定したことは評価に値する。しかし、問題は、実際に日朝首脳会談実現に向けた「ルート」を探れているのか、ということだ。
だが、この点について、安倍首相は集会の挨拶で「残念ながら日朝首脳会談は、目処も立っていないのは事実」とあっさり白状しているのである。
ようするに、韓国やアメリカ、ロシアといった関係国の首脳たちが会談実現に漕ぎ着けるなか、ただ唯一、金委員長と会う目処もないがために「無条件」と打ち出しただけで、いまだ見通しは立っていないのだ。
これではお得意の“「やってる感」詐欺”でしかないようにも思えるが、実際、安倍首相の路線変更した対北朝鮮外交にも批判が出ている。
たとえば、外務省アジア大洋州局長時代に小泉純一郎首相による日朝首脳会談を実現した田中均・元外務審議官は、16日に放送された『報道1930』(BS-TBS)で安倍首相の「無条件」という方針転換について、こう指摘した。
「ひとり相撲を取っておられるんじゃないですか。普通、外交というのはね、たとえば米朝首脳会談をやるとなると、中身をどうするかというのは必死に詰めるわけですよ。首相ひとりが外交をやられるわけじゃないので、そもそも前提条件があるとかないとか言うことがおかしい」
中身も詰めずに前提条件を云々言うことがおかしい──。そして、田中氏は、安倍首相の姿勢をこのように一刀両断した。
「これは国内で、ひとりで呟いておられるってことじゃないでしょうか。とても外交だとは思えない」
「普通であったら、首相が『会いたい』とか首脳会談をやるんだというときには、もうすでに相手との間では合意がついているはずなんですよ。そういうもんですよ、外交って。首相だけがひとりで相撲を取るわけじゃないから」
「外交のにおいをまったく感じない」