拉致問題国民大集会での安倍首相(首相官邸HPより)
最近になって、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談に関して「条件をつけずに向き合わなければならない」と述べ、日本人拉致問題解決という条件を外す意向を示しはじめた安倍首相。「対話のための対話はだめだ」などと公言し、Jアラートを作動させて“北朝鮮パニック”を政治利用してきたが、ついに“蚊帳の外”外交では立ちゆかなくなってしまった結果だろう。
そんななか、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)とその支援組織「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)などが毎年春と秋に開いている「国民大集会」が19日に開催され、安倍首相も挨拶に立った。
そこで安倍首相は「トランプ大統領が米朝首脳会談で拉致問題に関する私の考え方を明確に伝えてくれた」とアピール。そして、「私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならないとの決意」という耳タコフレーズをまたも繰り出し、「条件を付けずに金正恩委員長と会って、率直に、虚心坦懐に話をしたい」と宣言した。
さらに、「国民大集会」前におこなわれた拉致被害者御家族との面会の席では、安倍首相はこうも述べた。
「拉致問題は安倍内閣で解決する。拉致被害者の方々と御家族の皆様が抱き合う日が来るその日まで、我々の使命は終わらない。その決意で、今後とも全力で取り組んでまいります」
まったくよく言うよ、とツッコまざるを得ない。というのも、昨年の総裁選での石破茂元幹事長との討論会では、記者から拉致問題に進展がないことを質問された際、安倍首相は「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言ったことはございません」などと開き直ったからだ。 被害者家族の前では「拉致問題解決は私の使命」とアピールし、実際には成果がないことを追及されると「言ったことはない」とうそぶく。これを拉致問題の政治利用と言わずして何と言うのだろう。
実際、今回の「国民大集会」でも、安倍首相は拉致問題解決に本気に向き合っているのか、疑わざるを得ない行動に出た。
というのも、安倍首相は集会で挨拶を終えると、「公務」を理由にそそくさと退場し、途中退席した。だが、この日の首相動静はこうだ。
〈午後2時から同19分まで、同所内の会議室「シェーンバッハ・サボー」で拉致問題の国民大集会に出席し、あいさつ。同20分、同所発。
午後2時36分、私邸着。
午後10時現在、私邸。来客なし。〉(時事通信)
つまり、「公務」を理由に集会を途中退席したのに、そのまま東京・富ヶ谷の私邸に直行。来客もなく自宅で過ごしたというのだ。
しかも、じつはこれ、昨年も同じだった。昨年4月22日に同集会に出席した安倍首相は、やはり「政務」を理由に挨拶を終えると退席。だが、この日も会場をあとにすると私邸に帰り、来客もなく朝まで過ごしている。
その上、昨年の集会では、安倍首相が退席する際、参加者から「なんだ、もう帰るのか」「最後まで席にいろよ」とヤジが飛んだ。にもかかわらず、昨年につづき今年も、安倍首相はそそくさと自宅に帰ったのである。