そして、実際問題として、ナベツネの威光は絶大だ。昨年、安倍首相は安倍応援団番組を地上波でも流せるようにするため、政治的公平を義務づける放送法4条の撤廃やネット事業者などのテレビ参入促進などを盛り込んだ放送事業見直しを画策したが、これにナベツネが激怒。ナベツネの指示で読売新聞が猛批判を展開した上、読売ジャイアンツ戦を一緒に観戦した際には、ナベツネが安倍首相に「日テレがテレ朝みたいになっていいのか」と恫喝したと報じられたほど。結局、安倍首相は放送法撤廃を引っ込めた。
このときのナベツネの目的は、『ニュース女子』のような政権擁護ヘイト番組の放送を阻止しようとしたわけではなく、たんに放送局の既得権益を守ることだった。だが、今回の国民投票のCM規制問題は特需が生まれる上、ナベツネにとっても悲願である憲法改正を実現させる千載一遇のチャンスがかかっているのだ。
そもそも、大久保社長と安倍首相はメシ友であり、そこにナベツネの意向も合致しているとなれば何の障壁もない。民放連会長として安倍首相を最大限にバックアップしていくことは間違いないだろう。
安倍首相の息がかかった応援団が暗躍して進んでゆく憲法改正をめぐる議論──。民放連が公平性を確保できないというのならば、どう考えても国民投票法の議論をイチからやり直すのが道理だが、自分たちの利益がかかったこの問題を掘り下げる民放の報道・情報番組は、はたしてあるだろうか。
(編集部)
最終更新:2019.05.09 11:54