日本会議ら極右勢力が男系男子にこだわる理由は、これこそが、戦前日本の侵略戦争の支柱となった国体思想を支えるものであるからに他ならない。事実、八木氏や故・渡部昇一氏などの“男系派”はそのアナクロな価値観をむき出しにしてきた。
〈天皇にはそのお役割の重要性とともに、その大前提として、神話に由来し、初代の神武天皇以来一貫して男系の血だけで継承されてきた血統原理に基づくゆえの、他に代わる者がいないというご存在自体の尊さがある。さらにいえば、陛下には天皇の位にいらっしゃること自体に十分意義があり、在位なさることで既にお役割を十分に果たしているとも言える。〉(八木氏、「正論」16年10月/産経新聞社)
〈皇室の継承は、①「種」(タネ)の尊さ、②神話時代から地続きである──この二つが最も重要です。
歴史的には女帝も存在しましたが、妊娠する可能性のない方、生涯独身を誓った方のみが皇位に就きました。種が違うと困るからです。たとえば、イネやヒエ、ムギなどの種は、どの田圃に植えても育ちます。種は変わりません。しかし、畑にはセイタカアワダチソウの種が飛んできて育つことがあります。畑では種が変わってしますのです〉(渡部氏、「WiLL」2016年9月号/ワック)
人間を「種」とか穀物に見立てる感性、個人の人格を完全に否定して「男系の血」だけが尊いのだと言い張るグロテスクさ……。
結局、彼らの本音は「万世一系が揺らぐようなことがあってはならない。それだけを考えればいい」(渡部氏)というものなのだ。なお、八木氏に言わせれば「神武天皇のY染色体を継承できるのは男系男子だけ」らしいが、現実に男性のY染色体を辿って行き着くのは“神話”ではなく類人猿だ。完全にカルトである。
また、例の“なんちゃって皇族芸人”こと竹田恒泰サンも「天皇というのは血以外の何物でもない」などと豪語する“男系派”の急先鋒。あきれることに、徳仁天皇の娘である愛子内親王を差し置いて、こんなトンデモまでぶっている。
「皇室典範って皇室は養子をとることができないって規定があるんですね。だから旧皇族の男系の男子から養子をとることが可能だというふうに変えるわけです。(中略)民法は赤ちゃんで養子をとれるようになってるんですね。成人していてもいいし、なんなら夫婦養子でもいいんです。そこまで広げればいくらでも(男系男子が)できる。しかもですね、旧皇族はこれからどんどん子どもが生まれてきます。私の周辺でもいとこ連中どんどん子どもが生まれて、その旧宮家、11宮家のうち、若い世代がどんどん子どもが生まれてきています」(テレビ朝日『朝まで生テレビ!!』2016年8月26日放送)