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「皆さんとともに日本国憲法を守る」から「憲法にのっとり」に

新天皇の「お言葉」で「日本国憲法」尊重姿勢が弱まった理由は…背景に安倍首相による取り込みと官邸の圧力

即位した徳仁天皇と新皇后(宮内庁HPより)


 5月1日朝、即位した徳仁天皇が「即位後朝見の儀」の「お言葉」で、憲法の尊重に言及した。

「常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望いたします」

 日本国憲法は、天皇に憲法を尊重し擁護する義務を課しており、明仁上皇も天皇即位の際、「即位後朝見の儀」の「お言葉」で「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、」と宣言をしていた。

 そう考えれば、今回も憲法を尊重する言葉があるのは当たり前なのだが、しかし、その“当たり前”に、一部で安堵の声が上がっている。というのも、この間、安倍政権が「新天皇のお言葉」から憲法のくだりを削除しようと圧力をかけているとの情報が流れていたからだ。宮内庁担当記者が語る。

「天皇陛下は、上皇陛下の姿勢を受け継ぎ、同じように日本国憲法を守ることを宣言する姿勢を見せており、上皇陛下もそれを強く望まれていました。ところが、官邸は『新しい時代にふさわしいお言葉を』と、暗に護憲色を抑えることを宮内庁に求めていたようです。官邸の代理人とも言われる警察官僚出身の西村泰彦次長が、東宮を通じて陛下を説得したという情報も流れましたし、この間、宮内庁内部でお言葉を巡ってせめぎあいがあったことは間違いない」

 しかし、実際に発せられた「お言葉」には「世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共に」など、上皇の姿勢をたたえる言葉がふんだんに盛り込まれ、「憲法にのっとり」という文言もあった。そのため、「新天皇が安倍政権の圧力を押し返した」「平和と民主主義を守る上皇陛下の姿勢を引き継ぐことを力強く宣言された」という評価になったらしい。

 だが、この「お言葉」、ほんとうにそう楽観できるものなのだろうか。というのも、明仁上皇の国民に寄り添う姿勢を受け継ぐ決意がきちんと盛り込まれている一方で、「憲法」への言及は明らかに弱くなっているからだ。

 明仁上皇の天皇即位の際の「お言葉」は前述したように、「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」というものだった。ところが、今回の徳仁天皇の場合は「憲法にのっとって」と言っただけ。明仁天皇の国民と同じ目線に立った護憲の決意はなくなり、「日本国憲法」も「憲法」に省略されていた。ベテラン皇室ジャーナリストはこう分析する。

「率直に言って、あのお言葉には、妥協の印象を強く受けますね。上皇陛下の業績を最大限にたたえ、その姿勢を受け継ぐことは押し通すことができたものの、憲法のところでは安倍政権に配慮し、必要最小限にとどめられたんじゃないでしょうか。実際、官邸側から見ると、あの表現なら御の字。この間の働きかけが実ったと喜んでいるはずです」

 そう、今回のお言葉は、新天皇が官邸の働きかけに屈した結果、とも読み取れるのだ。

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