2019年1月10日付の業界紙「電気新聞」に、JAIFの政策・コミュニケーション部の課長のインタビューが掲載されている。課長は「SNSを使った広報の反響」などについて聞かれ、このように語っていた。
「原子力反対の方の反応が目立ちますね。本当に細かく見て頂いていますが、たくさん雑言が寄せられる現状に、内心は傷ついています。メンタルがやられますよ。ツイッターは、何でもありの世界なので、無礼な発言が平気で来ます。ただ、こうやって反対の方々に、われわれの広報が届いたのは初めてです。それくらい反対の方に、インパクトを与えられているのではないでしょうか」
「真面目なコンテンツはたくさんあるのに一般には相手にされてきませんでした。多少きちっとしたスタイルを崩してでも、一般の方に届くことを優先しています」
つまり、こうした一見“悪ノリ”としか思えないPRサイトの狙いは、「インパクト」によるSNSでの拡散らしいのだ。周知のように、「原発反対」が再びタブー化しつつあるオールドメディアとちがって、Twitterなどでは原発推進派と脱原発派の論争がずっと続いている。原子力ムラはそうしたネットの言論空間を意識し、原発推進の論調を後押しするために仕掛けていると考えていいだろう。
それだけではない。原子力ムラは児童向けの“原発教育”にも熱心だ。東京電力HDなどの大手電力会社はHPで「原子力情報コーナー」を設けているが、なかには、子ども向けの「キッズコーナー」をわざわざつくっている会社も少なくない。
たとえば関西電力は、「あかね先生がいく」と題したWEB漫画(紙芝居)を掲載。車の排気ガスを強調したうえで、「電気自動車は環境にいい」ともっていき、〈地球環境にこれ以上負担をかけないように、原子力、火力、水力の各発電方法の特徴を生かしてバランスよく組み合わせて、安定した電気を届けています〉とPR 。安倍政権と原子力ムラが推し進めているエネルギーミックス=原発温存に誘導する典型的な論法である。
関電のキッズ向け漫画において、擬人化された原子力発電所は、ニコニコ顔で「けむりやガスは全然でないよ!」と話している。かわりに放射性物質が出ることをちゃんと説明するべきだろう。
いずれにせよ、今回、大炎上の末閉鎖した「あつまれ!げんしりょくむら」は、あの手この手を使ってくる原発推進PRのほんの一部だ。こうしたあまりに軽薄なノリこそ、未曾有の原発事故と汚染を招いた“原子力ムラ”の精神構造を物語っているのではなかろうか。
(編集部)
最終更新:2019.04.13 12:34