しかし、安倍首相と右派勢力が胸を張るこの「国書由来の元号」は、実を言うと「日本固有の薫り高き文化」とはいえない。というのも、「令和」は『万葉集』からとってきたといっても、万葉仮名である歌の部分ではなく漢文調の序文が出典なのだ。加えれば「令和」の説明中に用いられた「梅は鏡前の粉を披き」の部分の梅の木も、中国から日本列島に輸入された樹木といわれている。
国文学が専門の山崎健司・明治大学教授も〈「令和」に使われた万葉集の第5巻の序文は中国の六朝時代の政治家で、書家として名高い王羲之の書「蘭亭序」や同時代の詩文集の「文選」を参考にしたのではないか〉(NHKニュースより)と指摘している。
ようするに、安倍首相がナショナリスティックに自賛する「令和」という新元号は、皇室の伝統からみても、あるいは安倍首相自身の「日本の文化」という謳い文句からみても、フェイクそのものなのだ。
もっとも、無教養な安倍首相にとってはそんなことはどうでもいいのだろう。とにかく、この元号を利用して、自分をアピールし、国民にナショナリズムを押し付けることができればなんでもいいのだ。
実際、安倍首相の会見はまさに、元号を政治利用するためのパフォーマンスとしか思えないものだった。
なにしろ、安倍首相は談話を読み上げた後の質疑応答の際、「平成の30年間ほど改革が叫ばれた時代はなかった。政治改革、行政改革、規制改革。まあ抵抗勢力という言葉もありました」と元号と関係のないことを話しはじめ、「ちょうど本日から働き方改革が本格的スタートします」「1億総活躍社会をつくることができれば日本の未来は明るい」などと政策を宣伝しまくっていたのだ。