百田尚樹氏のツイート(3月21日)
沖縄県今帰仁村の運天漁港の防波堤付近で死んでいるのが発見されたジュゴンをめぐって、また、あの人のフェイクニュース加担があらわになった。
ジュゴンは、日本では沖縄本島周辺だけで確認されている国の天然記念物で、環境省のレッドリストでもっとも絶滅の危機度が高い絶滅危惧IA類(CR)に指定に指定されている。2007年には、現在、新基地建設工事が進められている大浦湾の沖合で親子とみられる2頭のジュゴンの姿が撮影され、大きな話題に。同年、沖縄出身のミュージシャン・Coccoが「大浦湾に帰ってきた2頭のジュゴンに捧げます。ありがとう」というメッセージとともに沖縄限定シングル「ジュゴンの見える丘」を発表したことでも有名だ。
今回、このとき確認された親子ジュゴンの母親ジュゴンの死亡が確認され、海に浮かんだ亡骸の写真に多くの人が「残念」と哀悼の意を表していた。ところが、そんななか、百田尚樹氏がこんな投稿をおこなったのだ。
〈沖縄のジュゴンが1匹死んだらしい。そら、いつか死ぬやろ〉
この投稿に非難の声があがると、百田氏はさらにこう投稿した。
〈どんな可能性もある。基地反対派に殺された可能性もある。どんな可能性があったとしても、生物はすべていつか死ぬ〉
基地反対派がジュゴンを殺した可能性もある──。一体、百田氏は何の根拠があってそんなことを言いだしたのか。百田氏はその後も「基地反対派が殺した可能性」の根拠について何も示していないが、じつはネトウヨの間で、まったく同じようなデマが流れていた。20日に、ネトウヨまとめサイトの「あじあにゅーす2ちゃんねる」が「沖縄で死んだジュゴン、パヨクに撲殺されていた事が判明!!!」という記事を配信。それが拡散しているのだ。
このまとめ記事は「沖縄で死んだジュゴンに深い傷と出血 死因は頭部外傷か」という2ちゃんねるのスレッドを元ネタにしたもので、〈パヨク ついに ライン 超えたな〉〈反対派の船のスクリューに……〉〈なんか刺したような跡あるよね〉〈ひでえなパヨクは〉という決め付けの投稿も掲載されている。
だが、これは完全にデマである。そもそもスレッドの最初に貼り付けられている琉球新報の記事は「生息精査 国に求める 漁協、保護団体 ジュゴンの痛々しい姿に「残念」」というタイトルのもので、記事中でも「死因は頭部外傷」などとは書かれていない。それどころか、死骸を確認したジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎事務局長も「死骸を見る限りでは死につながるような傷などは確認できなかった」としている。
百田氏が「あじあにゅーす2ちゃんねる」のデマまとめ記事を見て〈基地反対派に殺された可能性もある〉と言い出したのかどうかはわからないが、これらが何の根拠もない悪質な憶測に基づいたデマであることは間違いない。
なぜ、安倍応援団の百田氏やネトウヨは今回、こんな根拠のないデマを流そうとしたのか。それは、辺野古新基地建設工事がジュゴンに象徴される豊かな生態系に及ぼす悪影響が指摘されてきたからだ。
そもそも、辺野古の海草藻場に棲息する海草には環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されているものもあり、これ自体が保護すべき希少なものなのだが、以前までは、その海草藻場でジュゴンの食み跡が確認されてきた。