首相官邸HPより
「不適切な取り扱いや事実と異なる虚偽の説明をした」ことを認めつつ、「隠蔽は積極的に隠すこと」という“独自要件”によって「組織的隠蔽はない」とした特別監察委員会の追加報告書が、昨日公表された。この報告書では、やはりと言うべきか、肝心の官邸の関与については調査がおこなわれずじまい。再び「お手盛りだ」と批判が起こっている。
いい加減な報告書の内容からは、さっさと統計不正問題の追及から逃げたいという安倍首相の本音が透けて見えるようだが、きょうの衆院予算委員会では、またも安倍首相が付け上がった姿勢を見せた。
それは、2018年1月からの「毎月勤労統計」調査において産業構造や労働者数などの変化を統計に反映させるための「ベンチマーク更新」でさかのぼり補正をおこなわなかった問題について立憲民主党の長妻昭議員が追及をおこなっていた際のこと。この「ベンチマーク更新」にともなう補正を廃止したことは、2018年の賃金伸び率引き上げに大きくかかわっているのだが、厚労省の有識者検討会では補正をおこなうことで中間的整理案がまとめられていたにもかかわらず、補正を廃止してしまったのだ。
この問題について、石田真敏総務相は話を誤魔化すような答弁に終始。だが、その答弁の不正確さを長妻議員が指摘している最中、こんな発言が飛び出したのだ。
「総理、いま変なヤジ飛ばされました?『だからなんだってんだ』と。いま聞こえましたよ」
長妻議員の発言中の出来事でもあり、音声で安倍首相のヤジは確認できなかったが、安倍首相は2月18日の同委でも「選挙に5回勝ってる」とヤジを飛ばし、20日には根本匠厚労相に「いったん下がれ」と自席から指示をおこなうという“事件”まで起こしている御仁だ。
その上、この長妻議員との質疑応答では、“消えた年金”問題の追及で開き直った無責任な態度をとったことに非難の声が飛んだ際、安倍首相は「席からヤジるのだけは、やめてもらえませんか?」「誠意をもってお答えしているんですから」と述べていた。「ヤジはやめろ」と言った本人が、そのすぐあとヤジを飛ばしたというのである。
だいたい、この「ベンチマーク更新」にともなう補正を検討会のとりまとめを覆して廃止した問題は、前述したように2018年の賃金伸び率引き上げに大きくかかわる重大な問題だ。それを「だからなんだってんだ」と開き直るようなヤジを飛ばすとは……。
いや、安倍首相がもっとも矮小化に必死になっているのは、首相秘書官が圧力をかけていたという事実があきらかにされてしまったことだ。
2月22日に公表された、官邸による圧力を証明するメール。これは厚労省の有識者検討会で座長を務める中央大学・阿部正浩教授に対し、厚労省の手計高志統計情報部雇用・賃金福祉統計課長補佐(当時)が2015年9月に送ったもので、「官邸関係者に説明をしている段階」「委員以外の関係者(中江元哉首相秘書官)から部分入れ替え方式で行うべきとの意見が出てきた」といった文面が登場する衝撃的な内容だった。
そもそも、中江前首相秘書官は参考人招致された国会で、同年3月に厚労省職員と面談した事実について「専門家の意見を聞くなど改善の可能性をについて問題意識を伝えた」「(検討会の)議論やその結果について報告を受けた記憶はない」と答弁してきた。それがどうだ。実際には検討会の報告を受けていた上、「部分入れ替え方式で行うべき」と明確に指示を出し、結果として「専門家の意見」を覆させていたのである。