もっとも際立つのが、やはり産経新聞だ。驚くことに、問題の『プライムニュースイブニング』放送後の26日付で、番組でも名前があげられた産経新聞の黒田勝弘記者が、紙上で番組とほとんど同じことを得意げに開陳している(「ソウルからヨボセヨ 韓国人のケンカの仕方」)。
黒田記者は、〈韓国人のケンカには3つの特徴がある。まず威張った態度で強い言葉や大きな声を出して相手を萎縮させようとする。2つ目は、周囲に訴え味方を増やして有利になろうとする。3つ目は、争点をずらし別の争点を持ち出して挽回しようとする〉などとして、さらに〈あるいは激高しながらお互い「何なら殴ってみろ!」と言って顔を突き出す。先に手を出すと「殴りやがったな!」と相手を非難し、それを周囲に触れ回って優位に立つ〉などと書き散らしたあげく、〈最近の日韓間の軍事的トラブルにおける韓国側の振る舞いも、こうした伝統スタイル(?)に合致している〉などと結論づけた。
すでにヘイトスピーチだと批判された後にも関わらず、同じ差別扇動言辞を堂々と紙面に掲載する……。どうかしているとしか思えないが、産経では黒田氏だけでなく、同紙の阿比留瑠比・政治部編集委員もたびたび「韓国人」を主語にした差別的主張を続けてきた。
たとえば、産経紙上での連載コラム「阿比留瑠比の極言御免」の1月9日付では、「変わらず自己中心的な韓国」と題し、〈『韓国の挑戦』などの著書もあり、かつては親韓派だった作家の豊田有恒氏はやがて韓国に批判的となり、4年前に出版した『どの面(ツラ)下げての韓国人』ではこう突き放している〉として、「同じ地球人と考えずに、どこか遠い異星の宇宙人だと考えたほうが、対応法を誤らない」。その上で、〈それほどまでに彼らの考え方、行動様式、慣習、常識、道徳観、価値観、美意識、世界認識などの日本人との差異は大きいのである〉と断言した。
昨年11月1日の同コラム(「韓国に分かる形で怒り示そう」)などでは、『正論』(産経新聞社)同年3月号で阿比留氏が対談した西岡力・麗澤大客員教授の話を引用。「韓国人は、100のことを伝えたいときに200を言います。相手が200を言ったらそれを100と受け止める」なる西岡氏の主張を無批判にひっぱって、〈難儀な話だが、韓国に対してはそれ相応の対応を取るしかない〉とまくし立てた。
また、昨年3月5日付産経新聞でのオピニオン記事(「韓国に怒りを伝えるためには」でも、「韓国人」を「DNA」で一括りにし、こう書いている。
〈数年前に韓国の学者と話をしていて、韓国の中国観の話題になった。彼は「韓国人は本当は中国が嫌いだ。何かと偉そうな態度をとる」と述べたうえで、こう赤裸々に続けた。
「だけど、韓国人は歴史的背景から中国に対する恐怖心がDNAに刻み込まれている。無理なことを言われても、『ご主人さまだから仕方がない』となる」
結局、韓国が日本との約束を平気で破るのも、世界中に慰安婦像を建てるような侮辱行為に走るのも、支援を受けて感謝もしないのも、日本は反撃しない怖くない国だと認識されているからだろう。
歴史問題でも何でも、韓国に迎合的な態度をとるのは「百害あって一利なし」なのである。〉
もはや言葉もない。こうした言説が悪質であるのは、まさしく「韓国人の〇〇」や「DNA」などと言って国籍や民族でまとめ、“威張りちらす”“怒鳴る”“主張を喚き散らす”“論点をずらす”“中国には弱い”“同じ地球人と考えないほうがいい”などと連ねている点だ。何度でも言うが、こうして多様性・個性を無視し、ネガティブなステレオタイプをつくりあげて喧伝、バッシングする行為は、ヘイトスピーチの典型である。