ドイツがアメリカを中心とするNATO諸国と結んだ地位協定を補足する「ボン補足協定」(1993年に大幅改定)では、NATO諸国軍の基地の使用には原則ドイツの法律が適用されると明記された。また、基地の外でもドイツの法律に従って、国防大臣の承認を得ねばならないように変更された。この改定によってNATO諸国軍の低空飛行訓練は厳しく制限され、改定前と比べて大幅に減少したという。
日米地位協定のいったいどこが“他国の協定と比べて優遇”なのだろうか。安倍首相は日本国憲法を「米国から押し付けられたみっともない憲法」と攻撃し、9条への自衛隊明記などによる「自主憲法」制定を悲願としている。だがその一方、沖縄に米軍基地の負担を押し付けてばかりで、地位協定についても対米従属で思考停止しているとしか思えない。外務省がこっそり“政府見解”を修正しながら、相変わらず「根拠は地位協定でなく国際法」なる嘘をつき続けようという姿勢は、まさにその証左ではないのか。
前掲の『主権なき平和国家』は、序章で〈国論を二分する改憲論議をする前に、日本国民が力を合わせてやらなければいけないことがあります〉として〈日米地位協定の改定〉を訴えている。
〈なぜなら、現在の日本は形式的には「独立国」でも、日米地位協定によって主権が大きく損なわれているからです。
主権とは、国家が他国からの干渉を受けずに独自の意思決定を行う権利のことです。主権が損なわれた、つまり、自国のことを自分で決められない国が、どんなに立派な憲法をつくっても、それは「絵に描いた餅」になります。だから、憲法よりも、まずは日米地位協定を変える必要があるのです。日米地位協定を改定し、真の主権を取り戻してこそ、日本は憲法を自らの意思で実行していく力を持つことができます。〉
米軍の要請を丸のみした2015年の安保法制からも明らかなように、安倍首相による改憲は、日本を「普通の国」にするものではなく、ただ「戦争のできる国」として、いっそう米国の「属国」にしてしまうだけだろう。少なくとも、「普天間か辺野古か」と在沖米軍基地の固定化を迫り、「運用改善」との名目だけを掲げて地位協定の抜本改定に及び腰の安倍政権には、したり顔で「主権」を語る資格など微塵もないのである。
(編集部)
最終更新:2019.01.16 11:04