実際に、自民党は「生産性」発言を撤回していない杉田水脈議員に何の処分も下さなかった上、杉田議員への批判が集まる最中、自民党の谷川とむ衆院議員が“同性愛は趣味”と発言するという問題まで起こった。また、2017年には竹下亘総務会長が「(国賓の)パートナーが同性だった場合、私は(宮中晩餐会の出席に)反対だ。日本国の伝統には合わないと思う」などと発言し問題に。自民党は2016年の参院選の公約で〈社会全体が多様性を受け入れていく環境を目指します〉などと表向きはLGBTフレンドリーを装ったが、内実はまったく違うのだ。
事実、2015年3月に開かれた自民党の「家族の絆を守る特命委員会」の会合では、渋谷区の同性パートナーシップ条例に対して疑義が呈されただけでなく、複数の議員が同性愛について「考えるだけでぞっとする」などと発言し、しかも場内には笑いが起きたという(朝日新聞2016年11月20日付)。
こうした性的マイノリティに対する自民党の差別姿勢は、2012年の自民党憲法改正草案によく表れている。現行憲法では家族のなかでの個人の尊重が謳われている24条を、自民党の憲法改正草案では〈家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない〉としている。ここで自民党がいう「家族」とは夫がいて妻がいて子どもがいるという「伝統的な家族」であり、「個人よりも家族」という考え方といい、真っ向から多様性を否定する内容だ。
そして、この「伝統的家族観」こそが、異性愛以外の性的指向を排除するだけでなく、女性差別を温存させ、国が担うべき社会福祉を「自己責任」のお題目のもとで家族に押し付けようとする。現に、昨年12月14日に決定された与党税制改正大綱では、安倍自民党は驚きの主張を展開。配偶者と死別したり離婚したひとり親と違い、未婚のひとり親が控除を受けられない「寡婦(寡夫)控除」の改正に対し、自民党内から「未婚での出産を奨励することにつながる」「伝統的な家族観が崩れる」などという反発が起こり、結局、未婚のひとり親に対する適用は見送られてしまったのだ。
ひとり親世帯の貧困率は50.8%(2015年)にものぼる深刻な問題であり、さらにその貧困は子どもに受け継がれる「貧困の連鎖」を生んでおり、ひとり親への支援は喫緊の課題だ。にもかかわらず、ここでも「伝統的な家族観が崩れる」などとがなり立てる──。自民党から性懲りもなく性的マイノリティへの差別発言が噴出することも、出産・子育てしやすい環境づくりが一向に進まず出生率が低下しつづけることも、「伝統的家族観」を振りかざす安倍政権であるかぎりは必然のこと。「誰もが生きづらい社会」の大元に、安倍自民党のこの極右思想が深刻な影響を与えていることを忘れてはならないだろう。
(編集部)
最終更新:2019.01.05 10:19