能町氏は、「週刊文春」(文藝春秋)12月27日号の連載コラムで、『THE W』に出ていない女性芸人でおもしろい人はたくさんいるとし、『THE W』のネタの方向性には、日テレの志向も影響しているのではないかと指摘している。
〈女性芸人は、圧倒的多数である男性芸人に混じってネタをするため、ブス・モテない・おばさん……など、どうしても男性の視点を意識した自虐を挟み込みがちです。日テレはただでさえバラエティ番組での男女観が時代遅れで保守的なので、なおさらこの方向性が好まれそう。今回の決勝進出者にもこの傾向は強かったのですが、そういうのはもう陳腐だし、時代にも合っていません〉
能町氏の言うように、日テレのお笑いや女性観は非常に保守的だ。『エンタの神様』など、わかりやすく単純な笑いが良しとされる空気が支配的なうえ、『zero』有働由美子キャスターのアイドル扱いや、『女が女に怒る夜』や、本日放送の『超踊る!さんま御殿』内の「激突モテ美女VS女芸人」というコーナーなど女性同士を争わせるという典型的なミソジニー企画を見てもわかるように、女性を結局、“色物”としか見ない傾向もある。
そういう意味では、塙が言っていた「“女性のこと”をネタにする人が多すぎる」「女性の『彼氏がいなくて……』という内容はバラエティ番組のひな壇でやって欲しい」という批判は、むしろ日テレの意向だった可能性もあるだろう。
だが、この「男性優位社会の価値観」押し付けが女芸人のお笑いを歪ませているという問題は、日テレだけではなく、お笑い全体に言えることでもある。
俳優やミュージシャンなどに比べてみても、芸人は男女の活躍度の差が圧倒的に大きい。そして芸人の世界では、体育会的ホモソーシャルな人間関係がいまだ支配的だ。男尊女卑、弱者をいたぶるパワハラ体質からいまだ抜け出せない、前近代的価値観が根強い。
芸人の世界における、女性の扱いは、“嫁”と“性のはけ口”と“女と認めない(「ブス」「おばさん」「女を捨てた芸人」など)”の3パターンで、そこには同じ人間同士という対等な関係は存在していない。
しかも、お笑い界を支配するこうした「男性優位の価値観」は、人間関係やシステムだけの問題ではなく、「お笑い」そのものにも色濃く反映されている。
それは、飲み会や合コン、風俗遊びなどの場での人間関係が、仕事にも持ち込まれ、ダイレクトに結びついているからだ。