しかも、だ。山井議員がこうした事例を紹介していた際、自民党席からは「警察に行ったらいいよ」「えー?」というヤジが飛び、山井議員がそのヤジに「こういう状況が放置されているんです」「そんな現状も知らずに法案を通しているんですか」と反応する場面もあった。
まさに自民党が技能実習生の労働環境整備にまったく関心がなく、人権を踏みにじる状態を黙認したまま法案を通そうとしているかがよくわかる内容だが、しかし、『ひるおび!』では山井議員のフィリバスターを批判するだけで、技能実習生の実情が語られた場面や、自民党からのヤジが飛んだという場面は一切放送せず。たんに約1時間45分の趣旨弁明があったことだけを伝えて、「国民は共感しない」などと断じたのだ。
さらに、片山氏につづいて、おなじみの田崎史郎氏もこう述べた。
「(フィリバスターは)いかに自分たちが格好良く反対しているのかっていうのを見せようとしているだけなんですよ。法案の中身が問題ならば、自分たちで修正案なり附帯決議を要求して、それを入れさせると。それを踏まえて政府が検討せざるを得ない状況に追い込んでいく。そのほうがよっぽど有効ですよ」
また、テレビキャスターの伊藤聡子氏も「これって本来は全然対立する話題ではない。日本が一丸となってこれを、労働力の不足を埋めるためにどういうふうにしたらいちばんうまくいくのか、建設的に出し合って、それを野党は『こういうふうにしたらどうでしょう』ってたしかに言って欲しかった。対案があるなら出してほしかった」と野党を批判した。
田崎氏にしても伊藤氏にしても、まずは法案の中身を紹介してから言えよ、という話だ。今回の法案は、受け入れ数にはじまって業種やその分野、在留期間や報酬の水準、日本語習得の支援や相談といった支援計画の中身まで何も書かれていないという審議入り以前のシロモノ。修正案や附帯決議案を出す以前に組み立てからやり直しすべきものなのは一目瞭然だ。なのに、その根本的な問題も指摘することなく「対案を出せ」とは……。
法案の問題点や審議の中身には突っ込まず、とにかくすべては「野党のせい」。そうした番組の姿勢を象徴していたのが、八代英輝弁護士のコメントだ。
八代弁護士は「たしかにいまの出されている法案は私から見ると、建築基準法スレスレの1階建てに2階3階を積み重ねるようなもの」「法務省はデータの改ざん、データの不備が出てきたり、法案の立て付けもしっかりできない、受け入れ規模の説明もできない、職種の説明もできない、お粗末極まりなさすぎる」と、法案に問題があることを指摘した。だが、そのまとめは「(野党が)対案を示して国民が選択肢を得ることが必要だった」。わかってはいたが、やっぱり国会をとくにチェックもしないで、とにかく野党の足を引っ張ることしか考えていない、同じ穴のムジナだった。