ところが、その差別を目的とした行動が、いつのまにか、あたかも「社会的な正義」であるかのように変換され、どんどん広まっている。
たとえば、高須氏やネトウヨたちが通報したことで、昨日サイモン・ウィーゼンタール・センターはBTSに対して嫌悪感を示す声明を出した。
在特会らの呼びかけるヘイトデモでは、ナチス旗に似ているどころかハーケンクロイツそのものが掲げられていることも少なくない。日本のレイシストやネオナチが自らの韓国差別を正当化するために、長年ユダヤ差別と戦い続けてきたサイモン・ウィーゼンタール・センターの権威を、「差別の道具」として利用するという、醜悪極まりない事態になっているのだ。
さらに、こうした状況に拍車をかけているのがメディアだ。BTSの問題はワイドショーなども取り上げ始めたが、問題の本質、ヘイトの構造に一切触れることなく、「原爆Tシャツけしからん」というBTSバッシングと韓国バッシングだけを叫んでいる。
ネットニュースも、少しでもBTSを擁護しようものなら大炎上する状況に怯えているのか、擁護論や冷静な分析を展開しているメディアは皆無。逆に、ネトウヨ層に媚びて、BTSバッシング・韓国バッシングをエスカレートさせている。
そして、問題はどんどん広がり。徴用工問題以降、急速に悪化する日韓関係の分断をさらに煽る結果をもたらしている。
まさに絶望的な状況だが、今回のBTSバッシングにはたったひとつ救いがある。それは、「ARMY」と呼ばれるBTSのファンたちがこうした動きに敢然と声を上げていることだ。
これまで、芸能人やアーティストなどがネトウヨの激しい攻撃や炎上にさらされたとき、当人だけでなく、ファンも沈黙してしまうことが少なくなかった。結果的にその芸能人やアーティストは孤立し、一切の弁明の余地もないまま謝罪に追い込まれるのがパターンだった。
ところが、ARMYたちは今回、ネトウヨたちのデマ攻撃や差別攻撃に対して、地道に間違いや歪曲を指摘し、抵抗を続けているのだ。
いや、抵抗を続けているだけではない。今回の問題を通じて、日本と韓国の若者の間で分断を乗り越える新たな動きも出てきている。そのことについては、後編でお届けしたい。
(編集部)
最終更新:2018.11.13 03:49