だが、スタジオでは、横粂弁護士がまたも「取材の自由を考え直す必要がある。表現の自由は無制限ではなく公益、公助のために制限がある」「本人の認識では、まだ恐怖とか後悔とか反省が感じられないので、それをもっと言っていただいて議論すべき」などと言い放った。
挙げ句、土田は再び「話し方のスキルは必要だなと」と言ったり、橋本マナミも「要点がわからなかった」と、安田氏の「事実の説明」に対して不満を漏らし、番組終了直前に会見が終わると、次に始まる『直撃LIVE グッディ!』の安藤優子とのやりとりで坂上が「国民の関心事である自己責任についてどうなんですかといった質問はこれからだったのに」「ご自身の話も2時間もかかってる」と言うと、安藤も「(自己責任論について)核心をつく質問も出てこなかった」などと同調したのだった。
安田氏のシリアの現状にまつわる重要なディテールに富んだ貴重な証言の数々を「喋りのスキル不足」「時間をかけすぎ」と批判し、自己責任を追及することこそが「核心」だと言い張る──。ようするに『バイキング』では、シリアの武装勢力の実情や拘束者が置かれている状況などにはまったく関心はなく、たんに“安田氏が責められる場面が見たい、開き直ったなら叩きたい”といやしい欲望しかみせなかったのだ。
これはこの番組だけの問題ではないだろう。実際、ネット上では、安田氏の自己責任を叫ぶ主張が再び大量に投稿され、バッシングはピークに達している。帰国時から「早く説明しろ」と会見を要求する声は大きかったが、結局はシリアに関心を寄せるでもなく、安田氏の「謝罪会見」「バッシング会見」を見たがっていただけなのだ。
このように「事実」には無関心の状況では、紛争地にジャーナリストが赴いて報道することの重要性をいくら説いても、その意味は通じない。本日の『バイキング』は、この国の劣化を象徴する放送だったと言えるだろう。
(編集部)
最終更新:2018.11.02 08:19