安倍首相の嘘はこれにはじまった話ではない。2014年に消費税を5%から8%に引き上げた際、安倍政権は大々的に「消費税率の引上げ分は、全額、社会保障の充実と安定化に使われます」「社会保障制度は、すべての世代が安心・納得できる全世代型へ」と訴えていたが、蓋を開けてみたら、実際は2014年度の増税によって税収は5兆円増えたのに、社会保障の充実策に使われたのはたったの5000億円。2017年度は消費税増収分8.2兆円のうち、1.35兆円しか社会保障の充実策に充てられていない。結局、社会保障の充実を謳いながら、増税した分の多くは財政赤字の穴埋めに使われてしまった。
だいたい、安倍首相は、高齢者の医療費や介護保険の負担引き上げ、生活保護の切り下げなど社会保障費を削り倒す一方で、防衛費は増額の一途を辿り、来年度予算編成でも過去最大となる5兆2986億円を要求。その上、本日付けの東京新聞の報道によると、F35やオスプレイなどの購入でこの予算でも足りず、防衛省は2014年以降、本来ならば自然災害や不況対策などのために組まれる補正予算から毎年2000億円前後を追加。軍事ジャーナリスト清谷信一氏は「国の借金が巨額に上り、消費税増税が必要だといいながら、防衛費にじゃぶじゃぶ使えば世論の批判を浴びる。事実上、本予算を小さく見せるために補正予算を使っている」と指摘している。さらに恐ろしいことに、トランプ政権の押し売りで大量の兵器を購入した結果、〈日本の防衛費が将来的に、現在の2倍の11兆円超に達する可能性〉があると、「週刊朝日」(朝日新聞出版)11月9日号は報じている。
安倍首相は昨年、「安倍政権は10年間にわたり削減されてきた防衛費を再び増加させた」と誇らしげに語ってみせたが、その分、わたしたちの暮らしを支えるための社会保障費はどんどん削られてゆく──。それでなくても貧困世帯は大打撃を受けているのに、さらに消費税引き上げで金をふんだくろうとする言い訳が「半分は還元する」、である。軍備増強のために社会保障が削減され、増税で生活をダイレクトに苦しめた挙げ句、「でも社会保障にも使いますよ」「半分は還元するんですよ」なんて、タチの悪い詐欺のようではないか。